世界戦緊急中止の井岡一翔が次戦のターゲットをマルティネスとの仕切り直しの再戦1本に絞らなかった理由とは?
プロボクシングの元4階級制覇王者の井岡一翔(35、志成)のWBA世界スーパーフライ級王者のフェルナンド・マルティネス(33、アルゼンチン)とのダイレクトリマッチ(31日・大田区総合体育館)の中止が30日に発表された。マルティネスが来日後の25日にインフルエンザに感染、ギリギリまで回復を待ったが試合のできるコンディションに戻らなかったもの。病気や怪我による世界戦中止の場合は王座の剥奪はなく両陣営共に仕切り直しの再戦を希望。会見に応じた井岡は、「複雑な心境だが怒りはない」と語り「やれるなら(マルティネス)と戦いたい。その準備はできている」とコメントした。無事に仕切り直しのダイレクトリマッチは行われるのだろうか?
病気の場合は試合中止でも世界王座は保持したまま
井岡は13度目となるはずだった大晦日決戦前日の試合中止にも気丈にふるまった。「複雑な心境」とは語ったが、インフルエンザに罹患した王者への「怒りはない」という。
「試合がなくなって残念な気持ちですけど、僕自身、集中してこの試合に向けて、できることをチームとやってきた。とてもいい練習ができて、すごくいい時間を過ごすことができたのでその過程は無駄にはならない。マルティネス選手自身も体調管理に気を付けて、インフルエンザになりたくてなったわけじゃない。仕方のないことだと思うので、自分の中でそれを受け入れてしっかり整理して、また自分と向き合ってやっていくしかない。僕自身、下を向いていられないし次に向いて進みたい」
7月7日に自身のWBAのベルトと、マルティネスのIBFのベルトをかけて統一戦に挑んだが、0-3判定で完敗した。
「何度も立ち上がる姿を証明したい。必ず王座に返り咲く」
そう覚悟を固めて運命のダイレクトリマッチに向けて万全の準備をしてきた。
計量を前に最後の“水抜き“に臨んでいた午前9時に届いた中止の連絡。井岡のその心中は想像に難くない。なのに井岡は言葉で誰も傷つけなかった。日本初の4階級制覇王者ゆえの誇りだろう。
だが、体重超過ではなく、病気やケガなど不慮のアクシデントによる試合中止のケースでは、王座は剥奪されない。JBCの安河内剛本部事務局長も、診断書の提出を求め「基本はタイトルは保持される」との見解を伝えた。最終的にはWBAが判断を下すが、マルティネスは王者のままだ。今回の契約は一度白紙に戻るが、王者のマネージャー兼トレーナーのロドリゴ・カラブレッセ氏は、仕切り直しの井岡戦を強く希望した。
「もちろん井岡とやりたい。今後もこの階級で戦うことになっている」
今回のファイトマネーはゼロ。IBFを返上してまでファイトマネーの高い井岡戦を選んだのだから仕切り直しを求めるのは当然だろう。
この発言を受けて井岡も「やれるなら僕も戦いたい。それがべスト」と返した。
「いつでも戦える準備はできている。マルティネスと戦えるのがベストだが、できないのであれば、次のチャンピオンと戦えるように交渉に入ってもらいたい」