なぜ「雷神番外地」で平本蓮軍は”番狂わせ”の金星を提供し続けて朝倉未来軍に3勝4敗で敗れたのか?
総合格闘技イベント「RIZIN DECADE」が、大晦日の12月31日にさいたまスーパーアリーナで行われ、朝倉未来(32、JAPAN TOP TEAM)と平本蓮(26、剛毅會)がそれぞれ率いる軍団が激突した第1部の「雷神番外地」を朝倉軍が4-3で制した。試合前には因縁の2人、朝倉と平本が5月4日に「THE MATCH2」(東京ドーム)で再び対峙することが電撃決定。両者の代理戦争と化した7番勝負で、なぜK-1の精鋭らを集めた平本軍は”番狂わせ”の脇役になり続けたのか。
安保瑠輝也は16キロ差を跳ね返す
3勝3敗で迎えた最終第7試合。安保瑠輝也(29、MFL team CLUB es)が3-0の判定でシナ・カリミアン(36、イラン)を破った瞬間に、朝倉軍の勝利も決まった。それでも、安保の第一声にはうれしさと悔しさとが同居していた。
「もっと盛り上げたかったし、倒したかった、というのが率直な気持ちです」
未定とされていた詳細が、朝倉軍と平本軍の全面対抗戦となると発表されたのが12月22日。朝倉軍はBreakingDownファイターを、平本軍はBLACK ROSEを中心にともに7人で構成され、MMA、MMA特別、キックボクシング、オープンフィンガーグローブキックボクシングと、カードごとに異なるルールが設定された。
正式発表へ向けて平本は12月14日に、K-1 WORLD GPが開催されていた国立代々木競技場第一体育館でリングイン。K-1関係者が驚くなかで、朝倉軍と戦うK-1ファイターを次のような言葉を介して募集した。
「知名度ついて粋がっている素人集団を、一緒にぶっ壊しませんか」
これに元K-1 WORLD GPライト級王者の朝久泰央(26、朝久道場)が応じた。平本と行動をともにしていた、K-1出身の篠塚辰樹(26、剛毅會)らを含めて、自信を寄せる顔ぶれがそろった。
しかし、第1試合から先手を取ったのは朝倉軍だった。
五明宏人(29、JAPAN TOP TEAM)がダウンを奪われながらも、2-1の判定勝利を赤田プレイボイ功輝(26、剛毅會)からあげてBD軍が先勝すると、セコンドについていた平本がこれに激怒。自身のX(旧ツイッター)へこうポストした。
「は?どこが負け?ジャッジ基準ダメージが1番のポイント。その次にフィニッシュに行く姿勢なんじゃないの?相手疲れて組みついてだけじゃん。どんだけ朝倉未来にこの団体は気遣ってんの?ふざけんな」
第2試合を制したのも朝倉のチームだった。平本は軍身体能力の高さと稀有なパワーから「怪物くん」の異名をもつ黒薔薇くん(40、本名・鈴木博昭、BELLWOOD FIGHT TEAM)を送り出したが、安井飛馬(24、JAPAN TOP TEAM)に0-3の判定で敗れた。黒薔薇くんは敗因をこう語った。
「相手が上手だった。テイクダウンにくるし、組みにくるし、決めにもくると思っていたけど、予想以上にトップキープというか、足掛けから自分の上にくるのが上手かった。何度か脱出を試みたけど、上手くやられたまま終わってしまった」
安井が、著名なプロボクシングジムに通い始めたのは、今年に入ってからで、また打撃戦は素人。だが、柔道の豊富なキャリアがあり、勝機は得意の寝技の領域に引き込むことしかなかった。黒薔薇くんは、その最悪のパターンにはめられた。油断があったとしか言いようがない。