「今WBA王者に勝てるかと言えば50%。ただ将来世界王者になれる素材だ」世界戦中止の井岡一翔”後継者”に堤駿斗が8回TKO勝利で名乗り…敗れた元世界王者が語る可能性とは?
井岡の後継者を意識した。
4年前の大晦日で田中恒成(畑中)との日本人対決を制した井岡が髪を編み込んだヘアスタイルのコーンロウを「かっこいいなと思っていた」という堤は、同じ髪型で登場した。そこには髪の毛が長い、、パンチを打たれた際に揺れて、ジャッジの印象が悪くなるという細かい配慮もあった。そして一発で倒そうとせず「ボディなどで削って」消耗させて終盤に仕留めるパターンや、一発一発のパンチの的確性を求める部分もすべて井岡から学んだスタイルである。
その井岡がリング上に上がり祝福をしてくれた。
「最高やった。来年世界とれるよ」
「来年一緒に」
そんな話をしたという。
4月16日に引退危機に追い込まれる大失敗をやらかした。フェザー級時代は減量に苦しみ、元WBA世界バンタム級スーパー王者のアンセルノ・モレノ(パナマ)との前日計量で、1.6キロの体重超過。2時間後お再計量でも500グラムしか落ちずに計量失格となり、JBCから半年のライセンス停止処分を受けた。
「何度ももうボクシングを辞めようと思った」
この8か月の間、堤は引退か再起かで揺れ動いた。家族や志成ジムの関係者、応援してくれている人々の励ましの言葉が「ポジティブにしてくれ」現役続行へ導いてくれたが、中でも決め手となったのが、井岡の姿であり、言葉だった。
井岡は7月7日のフェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)との統一戦を前に「次はオレが見せるわ」と堤に伝えた。序盤から激しい打撃戦となり、井岡は判定負けで王座から陥落するわけだが、リングサイドにいた堤は「一歩も引かずに12ラウンドを戦い抜き、精神力、男としてのプライドを見せてもらった」と、感動を覚えた。
35歳の井岡は、引退せず今回ダイレクトリマッチのリングに上がる道を選択した。堤に「這い上がるわ」とメッセージを残したという。
「先輩が挑戦しているんだから、オレがやめて逃げちゃ駄目だ」
その元4階級制覇王者の姿が堤に再起を決断させた。
「二度と同じ過ちは犯さず、リングに上がって見ている人に面白いと思ってもらうことが恩返しになると思ったんです。日本のボクシングは面白いなと思ってくれる子供達を増やしていく。そして何よりボクシングが大好きなので、なくなってしまったら、人生で何をしていいかもわからない。ボクシング愛を持っているんです」