“山の神”は出現するのか…箱根駅伝2025の優勝を占う3つのポイント…青学大エース太田蒼生の投入区間がカギを握る
3つ目のポイントは箱根のクライマックスとも言える5区の”山”になるだろう。
青学大は5区に前回1時間09分32秒(区間2位=区間新)の若林宏樹(4年)、6区に前回58分14秒(区間2位)の野村昭夢(4年)を配置。國學院大は5区に高山豪起(3年)、6区に嘉数純平(3年)を入れてきた。駒大は5区に山川拓馬(3年)の起用が有力で、6区に前々回6区で58分22秒の区間賞を獲得した伊藤蒼唯(3年)を登録した。創価大は5区に若狭凜太郎(4年)、6区に前回58分15秒(区間3位)の川上翔太(2年)が入っている。
若林は1年時もトップでタスキを受け取り、1時間10分46秒の区間3位で悠々と駆け上がっている。今回も最初に走り出せば、区間記録(1時間09分14秒)に近いタイムで走るだろう。山川は前々回5区で1時間10分45秒の区間4位。全日本大学駅伝8区を日本人歴代2位で走破しており、2年間でかなり走力がついた。本人は「1時間8分台」と「山の神」の座を狙っている。
一方の高山は関東インカレ2部ハーフマラソン日本人トップの実力者だが、5区は初めて。前田康弘監督は、「5区は1時間10分台ぐらいでいける状況にあるのかな」と話していたが、はたしてどうなるのか。創価大の5区は読めないが、吉田以外の選手が1時間10分台でカバーできるようだと、かなり面白い戦いができるだろう。
6区の実績は青学大、駒大、創価大はほぼ互角。國學院大は「58分30秒を想定している」と前田監督は話していたので、やや劣るのかもしれない。
総括すると、青学大は前回同様、太田の区間で勝負を決めて、山で突き放して、7区以降は原晋監督のいう「ピクニックラン」に持ち込む戦略だ。
「往路優勝をしての総合優勝」を目指す創価大も往路重視。吉田響とムチーニを投入した区間で大きなアドバンテージを奪って、往路をトップで折り返す。6区川上でリードを広げて、あとはとことん逃げ切りたい。
反対に復路での逆転Vを狙っているのが國學院大だ。「復路重視のオーダーなら往路で2分差だったら逆転できるかなと思います。(主力を)1枚往路に回すとなると1分半切りぐらいじゃないですか」と前田監督は読んでいる。7区以降の選手はナンバー1だが、6区終了時までに〝射程圏内〟にとらえることができるのか。
駒大は2区篠原、5区山川、6区伊藤、それと佐藤圭汰が入る区間で攻め込みたい。特に故障上がりの佐藤は読めない部分が大きいので、ライバル校の予想を上回る快走を演じればレース全体の流れが変わるかもしれない。
往路で3強に一泡を吹かせそうなのが城西大だ。過去2年は斎藤将也(3年)が2区、ヴィクター・キムタイ(3年)が3区を担ったが、今回はキムタイを2区、斎藤を補欠登録。斎藤は「区間新を狙う準備はできています」と5区での出場に意欲を燃やしている。また関東インカレ1部10000mで2位に入った平林樹(4年)が3区に起用されることになれば、往路でトップ争いに加わるポテンシャルがあるだろう。
まもなく始まる第101回箱根駅伝。今年も熱いドラマを期待したい。
(文責・酒井政人/スポーツライター)