高校サッカー「記憶に留めておくべき」5人の次世代ヒーロー候補…サウサンプトンと契約の点取り屋にJ1川崎内定の大会屈指サイドバックも
【野田裕人】(静岡・静岡学園3年/DF/172cm・62kg)
怪我が連鎖した影響で、最終学年での公式戦にほとんど出場していない。それでも名門校のキャプテンを担う野田は、広島国際学院(広島)との1回戦で14分、高知(高知)との2回戦では28分と、ともに途中出場でプレー時間を増やしている。
高校進学後にアタッカーから右サイドバックへコンバート。持ちあわせていた攻撃力に加えて、1対1におけるボール奪取を含めた守備能力を融合させた野田は、高校年代では屈指の右サイドバックへと進化を遂げた。その証が2024シーズンの実績が不足していたなかでも手繰り寄せた、川崎フロンターレからのオファーとなる。
卒業後のプロ入りを「めちゃくちゃ驚いたし、信じられない気持ちでした」と振り返る野田が、いま見すえているのは5年ぶり3度目の選手権制覇。さらにプレー時間を増やし、チームの勝利に貢献する自身の姿を思い描きながら、大晦日の2回戦で王者・青森山田(青森)を撃破した高川学園(山口)との3回戦に臨む。
【田所莉旺】(東京B・帝京3年/DF/187cm・74kg)
さらに成長している自分自身の姿から逆算する形で、サッカー人生で大きな決断をくだしてからまもなく2年。田所がさらなる高みを目指す戦いに臨む。
決断とは小学生年代から所属し、高校生年代のU-18に進んでからも心技体を磨いてきた川崎の下部組織から帝京への転籍。将来はプロを目指す田所にとって、川崎U-18でプレーするのは夢を成就させるうえで近道だったかもしれない。
それでも高体連がもつ厳しさ、特に部員が112人を数える古豪・帝京に脈打つ競争意識の激しさが自分の成長には必要だと判断。帝京の一員としてU-18日本代表に選出された実績は決断が正解だったひとつの証であり、さらに「高体連にいくからには絶対に出たいと思っていた」と見すえていた、選手権の舞台にも初めて立った。
カナリア色のユニフォームがトレードマークの帝京が、選手権に戻ってくるのは15大会ぶりとなる。高さと強さを兼ね備えたセンターバックとして最終ラインを支え、今大会の結果をもってプロのオファーを手繰り寄せたいと望む田所は、明秀日立(茨城)と対戦する3回戦で2002年度大会以来、22年ぶりとなるベスト8進出を狙う。
■オノノジュ慶吏[群馬・前橋育英3年/FW/176cm・70kg]
名前は「慶吏」と書いて「ケリー」と読む。ナイジェリア人の父と日本人の母との間に生まれたオノノジュは、突出したスピードとフィジカルの強さを駆使しながら、群馬県の名門・前橋育英の最前線で相手に脅威を与える存在になった。
2年生で出場した前回大会では、立正大淞南(島根)で2ゴールをマーク。レギュラーに定着した最終学年では課題だったスタミナも増し、高円宮杯JFA・U-18プレミアリーグのEASTでは最多タイの10ゴールをあげて、堂々の得点王にも輝いた。
得意種目は数学と理科で、将来は「大学を経由してプロになりたい」と夢見る。最後の選手権。米子北(鳥取)との1回戦で先制弾を決めながら負傷退場したオノノジュは、愛工大名電(愛知)との2回戦を欠場した。チームは2-2から突入したPK戦を6-5で制し、帝京大可児(岐阜)との3回戦でエースが復帰するのを待っている。
(文責・藤江直人/スポーツライター)