前橋育英を4強に導いた”怪物FW”オノノジュ慶吏は成績オール「5」で慶応大法学部政治学科へ進む”頭脳明晰”ストライカー
寮生活を希望したのは、愛情をたっぷり注いで育ててくれた両親のもとからあえて離れて、自らに自立を促したいと考えたからだ。実際、4人部屋の寮で暮らしてきた3年弱の時間を「人間的に成長できた」と振り返る。
「具体的には当たり前のことを、当たり前にできるようになったというか。以前は面倒くさいという理由ですべて親任せにしていた洗濯物や洗い物なども、寮ではすべて自分たちでやらなきゃいけない状況なので。そういったなかで、日常生活の細かいところにも気を配れるようになって、成長できたんじゃないかなと思います」
メンタルの変化はプレー面にもポジティブな影響を与えた。
オノノジュが最終学年を迎えたチームは、Jクラブのユースチームも参戦する高校生年代の最高峰の舞台、高円宮杯JFA・U-18プレミアリーグEASTで出遅れ、群馬県大会の準決勝で敗れて昨夏のインターハイにも出場できなかった。
「夏休み明けからチームの意識が変わったというか、一体感がすごく強くなった。ゴールへの意識はもともとありましたけど、自分のところにボールがくる回数が増えた。自分自身もゴールを重ねるにつれて、ストライカーの責任感のような感情が芽生えてきて、ゴールへの執念が増したと思っています」
こう振り返ったオノノジュは、2年生で出場した前回大会でも立正大淞南(島根)との1回戦で2ゴールを決めた。勝利に必要なゴールをエースに託し、オノノジュもまた期待に応えようと、身長176cm体重70kgの体に搭載された稀有なスピードとパワーを全開にする。どん底からはいあがろうと総勢167人の部員が団結した結果のひとつが、プレミアリーグEASTにおけるオノノジュの得点王獲得だった。
同時進行でオノノジュは個人的な戦いにも直面してきた。
卒業後の進路について、オノノジュは早い段階からプロを除外してきた。成績はオール5で、約120人を数えるスポーツ科では常にトップ3以内に名を連ねてきたオノノジュが希望したのは慶應義塾大学法学部が設けている、難関とされるfit受験。1次選考と2次選考をへて、晴れて同学部政治学科に合格した。
「サッカーだけじゃなく、勉強も頑張りたかったので慶応義塾大学を選びました。体育会ソッカー部も1部に上がるし、そういう環境でサッカーも続けたかった」