「ソフトバンクは人的補償で楽天が指名した将来型の若手ではなく小林誠司を指名すべきだ」元ヤクルト編成部長が巨人にFA移籍した甲斐拓也の人的補償人選に緊急提言
楽天が8日、ヤクルトへFAで移籍した茂木栄五郎内野手(30)の人的補償として今季がプロ4年目の小森航大郎内野手(21)を獲得したことを発表した。残すはソフトバンクから巨人に移籍した甲斐拓也捕手(32)、広島から海外FAでオリックスに移籍した九里亜蓮投手(33)の人的補償。レギュラー捕手の流出したソフトバンクが、28人のプロテクト漏れが濃厚な小林誠司捕手(35)を指名するかどうかに注目が集まっているが、元ヤクルトの編成部長で、故・野村克也氏の”右腕”だったことで知られる松井優典氏が緊急提言した。
楽天は茂木の人的補償でヤクルトから21歳の小森を獲得
楽天がヤクルトから選んだ人的補償は将来を見据えた21歳の小森だった。小森は2021年のドラフト4位で宇部工高から入団したプロ3年目を終えたばかりの若手の内野手。昨季はファームで110試合に出場し、打率.252、2本塁打、23打点、24盗塁の成績でイースタンの盗塁王を獲得し、9月に初めて1軍昇格を果たしている。強肩&俊足が自慢で遊撃と二塁をこなす。
松井氏は、自らがヤクルトの編成部長として指揮を執った2015年の人的補償のケースに重なったという。その年、捕手の相川亮二がFAで巨人に移籍。ヤクルトは巨人から当時19歳の内野手の奥村展征(楽天の二軍内野守備走塁コーチ)を獲得した。当初は、捕手の加藤健の獲得を検討していたが、巨人から提出されたリストを見て方針を変更したという。
「今回の楽天の小森指名は、奥村に重なりました。そのオフにチームのウイークポイントだったショートを補強するために日ハムから大引啓次をFAで獲得したんですが、数年先を見据えて二遊間の層を厚くしてチーム内に競争を生み出したかったんです。もちろん相川の抜けた穴を捕手で埋めるため、加藤も検討したのですが、第3の捕手で実績はなく面白味がない。ヤクルトは、もう中村悠平が育っていたので、思い切って若い奥村の将来性を買ったんです。年間を通じて調査している編成部からも、奥村の野球に取り組む姿勢が高く評価されていました。奥村は、レギュラーにはなれませんでしたが、9年間プレーして、いい役割を果たしましたよね」
松井氏は、人的補償のパターンとしては、「FAで抜けたポジションを埋める即効補強型」「プロテクトから漏れたリストの中で年齢に関係なく最も実績のある選手を選ぶ話題型」「将来性のある若手を獲得する未来型」の3つがあるという。
残る人的補償は甲斐と九里。注目は甲斐の人的補償だろう。
甲斐は昨季102試合に先発マスクをかぶり、119試合に出場して打率.256、5本塁打、43打点の好成績を残した。7度目のゴールデングラブ賞を獲得した”世界一捕手”の甲斐が抜けた穴はあまりにも大きい。
巨人は、甲斐に加えて岸田行倫、大城卓三と3人の捕手が揃ったため、小林が28人のプロテクトから外れる公算が高く、そのベテラン捕手をソフトバンクが指名する事実上のトレードが実現するかがポイントとなっている。
同じように、捕手の相川を巨人に奪われた経験のある松井氏が、もしソフトバンクの編成責任者であれば、今回のケースで誰を指名するのだろうか
松井氏は、ズバリ「小林を指名すべき」と断言した。
「相川が巨人に移籍した時は、前年にすでに中村が92試合に先発マスクをかぶり、相川は、47試合出場に留まっていました。その不満もあってFAしたのでしょうが、中村に1本立ちのメドが立っていました。控えは不安だったのですが、巨人から人的補償で、加藤を指名しなければならないほど切羽詰まった状況にはなかったのです。部外者の私には、ソフトバンクが海野隆司と谷川原健太をどう評価しているかはわからないのですが、外から見ている限り、捕手という特殊なポジションを考えると、まだ2人で143試合を回すのは心配でしょう。私がかかわったヤクルト時代のケースとは違います。2人が育つまでの保険という意味で小林を指名すべきじゃないでしょうか」