「センターバックを貸して欲しいとの問い合わせがくるほど」なぜJ1町田は今オフの大型補強に成功したのか?
J1初挑戦の昨シーズンに3位へ躍進したFC町田ゼルビアが8日、東京・町田市内で始動した。夜には同市内でキックオフミーティングが開催され、黒田剛監督(54)はクラブ史上初のタイトル獲得を目標に掲げた。オフには横浜F・マリノスから元日本代表のFW西村拓真(28)、アビスパ福岡でキャプテンを務めたMF前寛之(29)、デュエル勝利数でリーグ2位の北海道コンサドーレ札幌のDF岡村大八(27)らを獲得。他チームから垂涎のまなざしを向けられる、J1で最も成功した補強をなぜ実現できたのか。
日本代表経験者が6人
真価を問われる新シーズンの開幕を前に、町田に異変が起こっていた。強化の最高責任者を務める原靖フットボールダイレクター(FD、57)が苦笑する。
「サッカー界全体がセンターバック不足といわれているなかで、全員をウチが獲得したんじゃないか、と思っているので。いまも『誰かを貸してほしい』といった問い合わせがあるくらいですし、それだけ多くの選手を獲得する戦略をもっていました」
J1に初めて挑んだ昨シーズンの町田は、リーグ最少だった34失点の堅守を最大の武器にすえながら、開幕直後から長く首位をキープ。終盤戦に入って息切れし、優勝こそ逃したものの、最終的には3位に食い込む大健闘を見せた。
迎えた新シーズン。ガンバ大阪から期限付き移籍していた守護神・谷晃生(24)が完全移籍へ移行し、キャプテンを務めた昌子源(32)、ドレシェヴィッチ(27)、中山雄太(27)ら最終ラインの選手たちも、そろってスカッドに名を連ねた。
そこへ昨シーズンのデュエル勝利数でリーグ2位の岡村が札幌から、身長188cm体重80kgのサイズを誇るエアバトラーの菊池流帆(28)がヴィッセル神戸から加入。他チームから期限付き移籍を打診されるほど選手層は厚さを増した。
守備陣だけではない。ボランチには前が福岡から、アタッカー陣には西村がマリノスから加入。清水エスパルスから期限付き移籍で加入し、韓国代表に名を連ねるまでに成長したFWオ・セフン(25)も完全移籍へスイッチした。原FDは「ちょっと甘いかな」と前置きしたうえで、オフの補強を次のように総括した。
「選手の実と質を重視したなかで、80点から85点くらいかな、と思っています」
今シーズンの町田はJ1リーグ戦に加えて、YBCルヴァンカップと天皇杯のカップ戦、さらに後半戦からはクラブ史上で初めて臨むAFCチャンピオンズリーグ(ACL)が加わってくる。ACLエリートになるのか、あるいはACL2になるのかは現時点で未定だが、いずれにしても過密日程を余儀なくされるのは必至となっている。
ゆえに積極補強に動いたわけだが、オファーを出したからといって、すんなりと決まるとは限らない。原FDもこのオフに繰り広げた交渉をこう振り返る。
「昨シーズンの好成績とクラブの文化が認知された結果として、非常に多くの選手に関心をもっていただけた。同時に選手の質を求めるほど多くのクラブと競合する。一昨年や昨年と比べると、競合するフェーズに入ったと強く感じました」
そうした状況下で、及第点をつけられる補強に成功したのはなぜなのか。
「代表クラスの選手たちが数多く在籍している、というのはすごく大きかったと思う。さらにレベルアップしていきたい、さらに自分の価値をあげていきたいと考えている選手たちが、彼らから刺激を得たいと望むなかでうまく話ができました」