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1・24のグッドマン戦を前に井上尚弥の発言が波紋を呼んだ(写真提供・大橋ジム)
1・24のグッドマン戦を前に井上尚弥の発言が波紋を呼んだ(写真提供・大橋ジム)

「狙わない方が失礼」井上尚弥のグッドマンの負傷した左目を「狙う」発言はフェアプレーに反しているのか…新たに浮上した”負傷ドロー”を回避しなければならない問題点

 大橋会長は、山下―ラシュワン戦についても触れた。
「あの試合で、ラシュワンさんは痛めた右足を狙わなかったのではなく、山下さんの利き足が左だったので、そちらを狙っただけ。痛めた足を狙う必要がなかっただけで、相手も金メダルを取るために本当に勝負にいっていた。変に美談になっているが、山下さんもそう感じていたと思う」
 大橋会長の証言通り、映像を確認すると、ラシュワン氏は痛めていた山下氏の右足にフェイントをかけてから、体重の乗っている左から払い腰を仕掛けている。山下氏は、それをかわして、相手のバランスが崩れたところに一気に抑え込み寝技に持ち込んだ。
 後日、山下氏も「怪我をした足を武士の情けで攻めてこなかったというのは誤解だ。彼は遠慮しなかった。右足だけを攻めるというような卑怯な手を使うことなく、真っ向からいつもどおりに堂々と向かって勝負してきてくれた」とコメントしている。
 「持久戦を狙え」という指示を守らなかったことや、ラシュワンが右からの払い腰を仕掛けなかったことなどから、様々な見方があることも事実。だが、フェアプレー精神が誤解された美談として伝わっていることも確かだろう。
 ただ井上がグッドマンの左目上を狙うとすれば、そこに新たな問題も浮上する。各団体の規定では、パンチによる負傷の場合、傷口が広がり、レフェリーあるいは、ドクターが試合続行不可能と判断した場合、負傷を負わせた側のTKO勝利となる。しかし、もし最初のカットが、偶然のバッティングによるものと判断された場合に、4ラウンド完了までに試合がストップすれば、テクニカルドローとなるのだ。5ラウンド以降で試合続行不可能となった場合は、そこまでの判定で勝敗が決することになる。そんなアクシデントで28戦無敗、世界戦23連勝のキャリアに「ドロー」の記録が付くのは不本意だろう。
井上は、4ラウンドまでの戦いの序盤で、頭と頭がぶつからないように細心の注意を払う必要がある。もしかすると、グッドマンが「負傷ドロー」狙いで、ガンガン頭から前へ出てくるケースも考えられないこともない。
 だが、大橋会長は、その不安を一蹴した。
「相手がサウスポーなら頭がぶつかる危険性はある。でも、グッドマンはオーソドックススタイルだし、突っ込んでくるファイターではなくアウトボクシングをするタイプ。偶然のバッティングで切れる心配はいらないでしょう。逆にそれを気にすると、尚弥が自分のボクシングができなくなる。気にせず戦えばいい」
 確かに井上には何をされても対応できるスキルがある。
 ファン注目の2025年のモンスターの初戦まで2週間を切った。10日、井上は、自らのXに仕上がった肉体でサンドバッグを打ち込む写真と共に「2 more weeks(あと2週間)」と英語で投稿した。
(文責・本郷陽一/ROSNPO、スポーツタイムズ通信社)

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