高校サッカー準決が国立をどよめかせた!なぜ流経大柏は東海大相模の超ロングスロー攻撃を封じて決勝進出を決めたのか?「セカンドボールの反応を徹底」
たとえばDF宮里晄太朗(3年)のように、流経大柏にもロングスローを担える選手がいる。4日の準々決勝を終えてから、柚木によれば「そういう選手たちに頼んで、ロングスローのときの選手配置なども含めて練習してきました」という。
最初の2投で対策を練られていると感じたからか。前半19分に左サイドで獲得したスローインで、佐藤はロングスローと見せかけて、ニアサイドの奥にポジションを取っていたMF沖本陸(3年)へ低く、速いボールを供給している。
相手のさらに裏を突く作戦だったと、東海大相模の有馬信二監督(58)は笑う。
「あれは大谷(健吾)コーチの発案で、相手も対策を練ってくるだろうから、そうしたら違うプレーをしようと。沖本がファーへクロスを送って、そこへ別の選手が飛び込むはずだったんですけど、ちょっとうまくいかなかったですね」
もっとも、東海大相模のロングスロー攻撃は中断を余儀なくされた。
3度目のスローインの直前に接触プレーで左膝を痛め、患部にテーピングを巻いて強行出場していた佐藤がピッチ上に倒れ込んでしまう。プレー続行が不可能となった佐藤は涙を流しながら、前半30分にDF野村渓太(3年)と交代した。
両チームともに無得点の均衡が破れたのは、その12分後だった。きっかけは皮肉にも流経大柏の宮里が右サイドから投じたロングスロー。ゴール中央に流れてきたボールを、必死にクリアしようとしたFW辻将輝(3年)の足がMF和田哲平(3年)の頭をかすめたプレーにPKが宣告され、柚木が大胆不敵にもど真ん中へ決めた。
結果的に決勝点となった一撃を、柚木はこう振り返った。
「前半は特に自分たちのプレー、自分たちのサッカーができないまま相手に押し込まれる苦しい時間帯が多かった。そのなかでPKのチャンスが回ってきて、10番を背負っている以上は自分が蹴るべきだと思ったし、実際に自信をもって蹴りました」
エンドが変わった後半は、一転して流経大柏が主導権を握った。流れを変えようと、東海大相模は“隠し球”を投入する。後半10分にMF高畑旺崇(3年)に代わって投入された戸川もまた、ロングスローを駆使できる選手だった。
東海大相模のロングスロワーを担ってきた佐藤が振り返る。
「いつかの試合で、戸川が『僕にもロングスローを投げさせてください』と言ってきて、実際に任せたら自分と同じくらい飛んで本当にびっくりしたんですよ」
ここ一番のために戸川を隠してきたと、有馬監督も再び笑い飛ばした。
「リズムが悪くなってきたので『戸川、投げろ、変えろ』と。変えろ、というのはスタジアムの雰囲気ですね。ロングスローを投げると沸くじゃないですか」
実際に戸川は投入されてからの3分間で、3度のロングスローを披露。ベンチで戦況を見つめていた榎本監督も、ピッチ上にいた柚木も、戸川の飛距離に「まだ別の選手がいたのか」と驚いた。ただ、最終ラインの選手たちは冷静沈着だった。