「プレッシャーのない仕事はどの世界にもない」J1川崎で剛腕を発揮した鬼木監督は26年ぶり復帰の鹿島アントラーズを優勝に導けるのか?
鬼木氏が川崎を率いた期間と、鹿島が国内三大タイトルから遠ざかっている期間はくしくも一致する。古巣がライバルに変わった8年間で、国内無冠ながらもリーグ戦ではすべて5位以内につけてきた鹿島を、鬼木氏は常にリスペクトしていた。
「気持ちの強いクラブ、というものが歴史に反映されていると思う。ここ数年は国内タイトルを獲得できていないといっても、リーグ戦で常に5位以内につけるのは他のクラブではありえないこと。ここに鹿島アントラーズというクラブが、長年にわたって培ってきた勝利へのプライドや意地、といったものを感じています」
昨シーズン限りで川崎の監督を退任。1999シーズン以来、実に26年ぶりに古巣へ、肩書きを選手から監督に変えて戻ってきた。タイトルに飢えているファン・サポーターは当然ながら、川崎時代と同じ結果を50歳になった鬼木新監督に求める。
新体制発表会後に行われた囲み取材。プレッシャーは感じないのか、と問われた指揮官は「プレッシャーのない仕事は、どの世界にもない」とこう続けた。
「僕自身、プレッシャーがあるかないかと問われれば、もちろんあります。それでも実際にこのクラブの監督になったいま、選手たちが、そしてファン・サポーターの方々が求めているタイトルを一緒に取れたときを想像すると、プレッシャーよりも喜びの方が大きすぎて。その意味で、成功とか失敗とかも考えていないかもしれない。目の前の1試合に対するスタンスを含めて、やるべきことをやってダメならば仕方がない。結果をしっかりと受け止める代わりに、常に最善の準備だけはしていきたい」
すでに7日から始動しているなかで、コーチングスタッフや選手たちには「リーグ戦の優勝を目指そう」と伝えた。昨シーズンのJ1リーグは、連覇を達成したヴィッセル神戸と勝ち点7ポイント差の5位。神戸と比べれば、総得点は「61」に対して鹿島は「60」であり、総失点は「36」に対して「41」だった。
決して大きく劣っていたわけではない。それでも最終的に勝ち点で差をつけられたのは、勝てる試合を引き分け、あるいは引き分けられる試合を落とすケースが多かったからにほかならない。鬼木監督は鹿島での戦いをこう見すえる。