「プレッシャーのない仕事はどの世界にもない」J1川崎で剛腕を発揮した鬼木監督は26年ぶり復帰の鹿島アントラーズを優勝に導けるのか?
「最後の最後で、勝ち点にこだわる姿勢は徹底して追い求めていきたい。ただ、正直にいえば、これが理想というサッカーはない。どのようなサッカーをするのか、というよりも全員でハードワークしながら全員で攻撃して、全員で守備をするサッカーを目指す。攻撃と守備とに分けるのではなく、すべてがつながっていると伝え続ける。勝つためには得点を多く取りたいし、それは攻撃的なサッカーと表現されるかもしれないけど、守備でも攻撃的にいく。そうした考え方をまずは浸透させていきたい」
戦力面では昨シーズンのJ1得点ランキングで2位となる、21ゴールをあげたブラジル出身のレオ・セアラをセレッソから獲得した。直近の4シーズンで、J1で54ゴールをあげているストライカーの加入は、15ゴールをあげたFW鈴木優磨(28)が孤軍奮闘した感のあったアタッカー陣に厚みをもたらす。
植田直通(30)、関川郁万(24)がフル稼働したセンターバックも、サガン鳥栖から左利きのキム・テヒョン(24)が加入。同じく手薄さが否めなかったサイドバックにも、左右でプレーできる小池龍太(29)が横浜F・マリノスから加わった。
スタッフには黄金時代を知る柳沢敦氏(47)がコーチに、曽ヶ端準氏(45)がGKコーチにそれぞれ就任。鬼木監督が招聘する形で栃木SC前監督の田中誠氏(49)が入閣し、昨シーズン後半に監督を務めた中後雅喜氏(42)が再びコーチとして、昨シーズンの流れを継続させる。輪郭ができあがりつつある新生・鹿島を指揮官はこう表現する。
「自分一人だけで何かができるとは思っていないし、実際に川崎のときも自分だけの力でタイトルを取れたわけではない。その意味でいえば、このクラブでも選手やコーチングスタッフ、クラブスタッフ、そしてファン・サポーターのみんなを頼りにしながら戦っていきたい。このクラブが目指しているものは、もとから一致している。そこ(タイトル)へ向かって、お互いが妥協なくやっていけると思っている」
鹿島は昨シーズンまでの8年間で7人もの監督が指揮を執った。混乱状態を根本的に収束させようと、レジェンドの一人である中田浩二氏(45)が昨秋にフットボールダイレクターに就任し、復活を託されてクラブOBの鬼木監督が招聘された。新たな一歩を踏み出した名門は14日から宮崎県内でキャンプに入り、チーム作りを加速させていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)