「金で動いた」と批判された3年前の神戸移籍の裏事情とは…元日本代表MF橋本拳人が4年半ぶりにFC東京へ復帰した理由を語る
FC東京での背番号は、渡欧する前と同じく「18」に決まった。畏敬の念を抱いてきたクラブのレジェンド、石川直宏さん(43)が象徴としていた背番号であり、橋本の移籍後に継承していたMF品田愛斗(25)が昨シーズン途中にJ2のジェフ千葉へ期限付き移籍し、今シーズンからは完全移籍へ移行したなかで空き番になっていた。
「帰ってくるときには『18番』をつけたい、とずっと思っていました。ちょうど愛斗が千葉に移籍したタイミングもあったなかで、もちろんナオさん(石川)の思いも、愛斗の思いも背負って、この番号をさらに重みのあるものにしていきたい。ナオさんにも連絡を入れて、シンプルに『頑張ってくれ』と言っていただきました」
思い入れの強い背番号とともに新たな一歩を踏み出した橋本は、自身のプロサッカー人生を翻弄した、といっていいロシアの軍事侵攻に次のように言及している。
「当時はやはり恐怖を感じていましたけど、いまはただただ心配な思いではあります。僕自身はロストフというチームそのものにはすごく感謝しているし、いまはリーグ戦も開催されているので、頑張ってほしいという思いだけですね」
あのままロストフで挑戦を続けていたら、などとはもう考えない。獲得したタイトルが2004、2009、2020シーズンのYBCルヴァンカップと2011シーズンの天皇杯で、リーグ戦では昨シーズンも7位と、いまだに一度も手にしていないFC東京の中盤で、攻守両面で新チームの力になる自分自身の姿しか思い描いていない。
「クラブからはチームを引っ張っていく存在になってほしい、と言われている。まずは自分のプレーにフォーカスして、僕の特徴である気持ちのこもった熱いプレーをしっかりと出しながら、周囲とコミュニケーションを取っていきたい。FC東京の結果はずっと追っていたけど、もうちょっとだな、という思いをいつも抱いていた。今シーズンこそは優勝争いをしたいし、そこへ自分の力を加えていきたい」
森保ジャパンに招集された原動力になった中盤での守備力に加えて、インサイドハーフを務めたロストフでは得点力にも磨きをかけた。4年半の間に搭載した新たな力にも磨きかけながら、橋本は愛着深いFC東京をけん引していく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)