無名→J2得点王→シントトロイデンの“スピード出世FW”小森飛絢がJ1クラブのオファーを蹴って欧州移籍を選んだ理由とは?
もっとも、小森に与えられた時間は約半年間と短い。今回は千葉からの期限付き移籍となり、期限は今年6月末までとシントトロイデン側からは発表されている。実際にはすでに今シーズンの7割を終えているリーグ戦と、その後に順位ごとに3つのグループに分かれて開催されるプレーオフしか残されていない。
そのなかでインパクトを残せば、完全移籍への移行も含めて、2025-26シーズン以降へつながる道も見えてくる。浦和から2023年夏に期限付き移籍でシントトロイデンへ加入し、パフォーマンスが認められて完全移籍へ移行。昨夏にはセリエAのパルマへと移籍して、試合ごとに評価を高めている彩艶という身近な例もある。
24歳という年齢はサッカー界、特にヨーロッパではそれほど若いとは見なされない。だからこそ期限付き移籍で、さらに半年間しかチャンスがない状況でも、小森は夢をかなえる近道としてベルギーの地における挑戦を選んだ。
初心に帰る、という決意を反映させたからか。空き番となっていた背番号のなかから、千葉のルーキーイヤーに背負った「41」をあえて選んだ小森が言う。
「自分はフォワードなので、やはり目に見える結果を残したい。環境もまったく違うし、英語を含めて言葉もそれほどできるわけではないけど、自分のほうからいろいろな選手にコミュニケーション取って、早くチームに馴染んでいきたい。もちろん日本代表も狙っているけど、そんなに簡単な世界だとは思っていない。だからこそ、試合だけでなく練習からもっと貪欲にゴールを狙い、さまざまな部分で質を高めていきたい」
2009シーズンを最後に遠ざかっているJ1の舞台へ、プロの世界へ導いてくれた千葉を戻せなかった心残りは、小林慶行監督(46)のエールが吹き飛ばしてくれた。
「お前ならやれる、もっとビッグな選手になってこい、と言っていただいて本当にうれしかった。目に見える結果を届けて恩返しをしていきたい」
一方でベルギー1部の16チーム中で14位と大苦戦を強いられるなど、今シーズンのシントトロイデンが置かれた状況も理解している。
「チームが望んでいる順位ではないと思うので、自分のゴールで救っていきたい」
前だけを見すえている小森は、シントトロイデンへ初めて合流したときの自己紹介でちょっとした苦労を味わっている。飛絢と書いて「ヒイロ」と読む名前を、日本人以外の選手たちの大半が上手く発音できなかったからだ。
「外国人選手には難しいみたいで、いまは『ヘェロ』と呼んでくれています」
苦笑する小森は、ホームにスタンダール・リエージュを迎える19日(日本時間20日)の次節で早くもデビューする可能性があると地元紙で報じられている。自らの活躍を介して「ヘェロ」が「ヒーロー」と喝采されるようになるたびに、身長178cm体重74kgの万能型ストライカーは、抱いている夢へ大きく近づいていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)