イチロー氏が殿堂に投票しなかった記者に「自宅に招待して一緒に酒を飲みたい」と呼びかけた粋なスピーチを米メディアが大絶賛…殿堂投票「公開すべき」の緊急提言も
「名乗り出てシアトルまで来てください」
日本人として初の米野球殿堂入りを果たしたイチロー氏(51)が23日(日本時間24日)ニューヨーク州のクーパーズタウンにある米野球殿堂での記念式典に出席し記者会見にも臨んだ。マリナーズ、ヤンキース、マーリンズの3球団で19年間プレーして米通算3089安打を放ったイチロー氏は、資格1年目で殿堂入りしたが、得票率は99.7%でわずか1票足らず史上2人目、野手では初となる満票での殿堂入りはならなかった。イチロー氏は、投票しなかった謎の記者に「自宅に招待してお酒を飲みたい」とユーモアを交えて呼びかけ、米メディアはそれを大絶賛した。また米スポーツサイト「ジ・アスレチック」は現在基本は無記名の殿堂投票を「公開にすべきだ」と緊急提言した。
「名乗り出てシアトルまでお越しください」
いかにもイチロー氏らしい。
わずか1票で2019年のヤンキースで通算652セーブ記録を持つマリアノ・リベラ氏以来となる満票を逃し、その正体不明の記者に批判が殺到している状況の中、その“事件”をウィットに富んだ表現で笑いに変えてしまった。
「現役選手として、7回クーパーズタウンを訪ねているのですが、8回目の今回、ホール・オブ・フェイマー(殿堂入り)として、ここに戻ってこられたことも大変光栄に思っています」と、切り出したイチロー氏はこう続けたのだ。
「投票していただいた記者の方々ありがとうございました。どうやら1人、投票してくれなかった方がいるようですが、ぜひ自宅に招待して、一緒にお酒を飲みたいので、名乗り出てシアトルまでお越しください」
殿堂入りの特別ユニホームに身を包み、同じく今回選出されたヤンキースなどで通算251勝のCC.サバシア氏、アストロズなどで通算422セーブのビリー・ワグナー氏と並んで記者会見に臨んだイチロー氏が冒頭でのユーモアを交えたメッセージで厳粛な雰囲気に包まれていた会見場を笑いに包み、記者たちの心をつかんだ。
さらにイチロー氏は「もし僕が(日本野球の)何かを変えたとここで言ったならば、おかしな人」「(昔の自分に逢えたなら)怖がらないで自分が信じた道に飛び込んで欲しいと言う」「(申告敬遠などのMLBのルール変更は)感情がなくなってしまったり、いくつか残念なことがある」などと独自の野球哲学を語り尽くした。
票を投じなかったのは誰だ?という問題を巡っては、今なお波紋が広がっているだけに、米メディアの多くが、このイチロー氏の発言を取り上げて称賛した。
USAトゥデイ紙は「殿堂入りから外した一人の野球記者に素晴らしいメッセージを送った」と称賛。米サイト「クラッチポイント」も「マリナーズの“レジェンド”のイチローが殿堂入りに投票しなかった作家に興味深い招待状を送った」との見出しを取った。
またヤフースポーツは「スズキ・イチローが殿堂入りの投票から彼を除外した一人の作家を“一緒に飲む”“楽しいおしゃべり”に招待する」との見出しを取り「反対票に誰が入れたかは謎のまま。この決定によりイチロー氏は、デレク・ジーター氏と並び、全会一致で選ばれるのに1票差で敗れた殿堂入り選手となった」と、伝えた。2019年にも、ヤンキースの「ザ・キャプテン」ジーター氏に票を入れない記者が1人だけいて、イチロー氏と同じく得票率99.7%で満票での殿堂入りを逃している。
その中で米スポーツサイト「ジ・アスレチック」のコラムニストであるスティーブ・バックリー氏が「もうこれから殿堂入りは誰に投票したかをすべて公開すべきだ」との緊急提言を行った。