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イチロー氏は九―バーズタウンの野球殿会見に臨んだ(写真・AP/アフロ)堂で
イチロー氏は九―バーズタウンの野球殿会見に臨んだ(写真・AP/アフロ)堂で

イチロー氏が殿堂に投票しなかった記者に「自宅に招待して一緒に酒を飲みたい」と呼びかけた粋なスピーチを米メディアが大絶賛…殿堂投票「公開すべき」の緊急提言も

 殿堂入りは、全米野球記者協会(BBWAA)に所属し、10年以上の取材歴を持つ記者の投票によって決定され、有効投票数の75%以上の得票で殿堂入りとなる。今回は、28人が候補者となったが、一人が最大10名までに投票できる。用紙にはすでに28人の名前が印刷されており、そのチェックボックスにマークを入れる方式だ。
 基本は無記名。ただ公開を選択するチェックボックスがあり、ここにチェックを入れた投票者は、殿堂入りの発表から2週間後にBBWAAが公開することになっている。今年の発表は2月4日。また事前に専門サイトで自らの投票を公開している記者も少なくない。ただ本人が名乗り出ない限り、今回のようなケースで誰が投票しなかったはわからない。ジーター氏に投票しなかった一人が誰であるかは、いまだに謎。2016年にはマリナーズの“レジェンド”であるケン・グリフィーJr.氏が、440票のうち437票を獲得して当時の史上最高の得票率となる99.32%で殿堂入りを果たしたが、3票足らず、この時も誰が入れなかったは不明のままで終わった。
 バックリー氏は、公開の必要性を「それは2025年に誰がイチローに投票しなかったかを知るためだけでなく、2015年にアーロン・ブーンに投票した2票を誰が投じたかを知るためだ」と記した。
 2015年にはランディ・ジョンソン氏、ペドロ・マルティネス氏、ジョン・スモルツ氏、クレイグ・ビジオ氏の4人が殿堂入りしたが、現在ヤンキース監督のブーン氏にも2票が入った。ブーン氏は、現役時代に球宴に一度だけ出場して通算1017安打を放っているが、レギュラーだったのは3シーズンほどで、タイトル履歴もなく、逆に2票を投じた記者の見識が問題となっていた。
 そのブーンに投票した2人のうちの1人は、デイトン・デイリー・ニュースのベテラン記者であるハル・マッコイ氏だった。
 マッコイ氏が自ら明かした。数年前にマッコイ氏が失明し、シンシナティ・レッズの担当から外れかけたとき、当時レッズでプレーしていたブーンが、マッコイ氏を毎晩、車で送ってくれる人を探したことがあったという。マッコイ氏はその感謝の気持ちを込めてブーン氏が殿堂入りの候補者となったときに1票を投じた。 
 バックリー氏は「それはマッコイ氏による無害、無反則の選択だった」と評し「それぞれのプレイヤーに投票する理由があるのと同じように、それぞれのプレイヤーに投票しない理由もある」と説明した。つまり殿堂入りに決まったガイドラインはないのだから誰に入れようが個人の自由であり、それぞれの価値観が違うのも当然だが、公開することで、資格者が、その説明責任を果たすことになるという意見だ。
 ただ一方で公開にはリスクもある。同氏によると、投票権を持っている記者は、自分たちの選択に反対し、激怒した人々から嫌がらせを受ける危険性にも直面しているという。同氏は、「そういう毒は、ジーターやイチローを投票用紙から外した悪党の投票権を持った記者に限ったことではない」とし、自らがマニー・ラミレス氏と、アレックス・ロドリゲス氏に投票しなかったことを公開した際に、知人から嫌がらせを受けたことがあるという。今やSNSでの誹謗中傷が問題なっているだけに、公開することにリスクは伴う。ただ同氏は、殿堂投票権を持つ記者が、400人にも満たないことから「非常に大きな責任を持つ小さなグループだ。私たちはそれについて話すことを厭わないべきだ。それについて書くことが、私たちの仕事だ」と結論づけて、公開での投票への規約改正を主張した。

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