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世界を狙っていた森武蔵が引退を決意(写真・山口裕朗)
世界を狙っていた森武蔵が引退を決意(写真・山口裕朗)

井岡一翔の”愛弟子”元2階級地域チャンプ森武蔵が25歳で引退…「ボクシングは命にかかわるスポーツ」…早すぎる決断の理由とは?

 プロボクシングの元OPBF東洋太平洋スーパーフェザー、元WBOアジアパシフィックフェザー級王者の森武蔵(25、志成)が現役引退することが1日、明らかになった。原因不明の甲状腺ホルモンの異常によるめまいに悩まされ、治療法がみつからず、満足にスパーリングや減量もできない状態に陥ったため引退を決断した。師と慕う元4階級制覇王者の井岡一翔(35、志成)からは「第二の人生の方が長い」とエールを送られた。森武蔵の生涯成績は17戦15勝(7KO)1敗1分。

 甲状腺ホルモンの異常からめまいに襲われる

 25歳の“プリンス”が世界の夢を果たすことなくグローブを吊るすことになった。森武蔵は、1月27日に所属ジムに引退の意思を伝え、師と仰ぐ井岡へも報告した。
 森武蔵は、プロボクサーになるため、高校にはいかず、熊本から単身名古屋へ移り住み、元WBC世界バンタム級王者の薬師寺保栄氏のジムへ入門。2016年にプロデビューし、2017年には、全日本新人王(技能賞)、翌年にはプロ8戦目でWBOアジアパシフィックフェザー級王者を獲得した。左構えからのキレキレのスタイリッシュなボクシングで、とんとん拍子で世界への階段を駆け上っていたが、2021年にロンドン五輪銅メダリストで、OPBF東洋太平洋同級王者の清水聡(大橋)と、世界挑戦切符をかけた2冠戦で拳を交えたが、0-3判定で敗れ、井岡の所属する志成ジムへ移籍した。
 環境を変えてもう一度、世界を目指していた森武蔵が、早すぎる引退を決断した理由は、原因不明のめまいに襲われるという病だ。
 甲状腺と体内ホルモンの異常から血糖値をコントロールできず、めまいや、時には、意識が薄れるなどの症状に苦しんだ。治療薬もなく、激しいめまいで、スパーリングができなくなり、減量にも影響を及ぼした。
「色々と病院を回って検査を受けましたが、完全に治癒する方法が見つかりませんでした。ボクシングは命にかかわるスポーツです。こんな状況でリングに上がれるほど甘いものじゃありません。ましてや僕が目指しているのは世界です。満足に練習さえできないのに、そのレベルにまで自分を高めることは難しいんです」
 そもそも先天性の持病も抱えながら、ボクサーを続けていたのだが、異常が出たのは、2023年6月の渡辺卓也(DANGAN AOKI)とのOPBF東洋太平洋スーパーフェザー級王座決定戦。3月にドローに終わっていた試合の再戦で、森武蔵は完全にペースを握っていたが、インターバル中に、突然、意識が遠のいた。セコンドにビンタを張られて我に返り、3-0判定で勝利して2階級目となる地域タイトルを手にした。この時も準備段階で異変が出ていた。続けて10月に地元熊本での防衛戦が決まっていたが、本格的なスパーリングに入ると、めまいが生じ、精密検査を受けたところ、甲状腺とホルモンの異常が発覚し、興行そのものが中止となり、せっかく奪ったタイトルを返上した。
 責任を感じた森武蔵は、この時、引退を考えたが、周囲の協力もあり、「第二の人生に踏み出すには、まだ時間はある。じっくりと治療に時間をかけてみて、体が元に戻れば、またボクシングをやれるかもしれない」と、1年間以上の休養期間をとり、昨年10月にライト級で再起のリングに上がった。
 だが、格下である中国人ボクサー黄朋のパンチを序盤に浴びる場面もあり、足を踏み、頭から突っ込んでくる反則まがいのラフファイトにも苦しめられ、口や額をカット。その傷口が広がり、8ラウンド途中で続行不能となり、負傷判定勝利した。試合後に「バッティングが多くて切っちゃいましたけど、向こうの選手も中国からアウェイに乗り込んで戦ってくださったので、みんな拍手でお願いします」とマイクで訴え、そのスポーツマンとしての誠意ある姿が、SNSで多くのファンの共感を得た。

 

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