悩める21歳の“逸材MF”中井卓大がスペイン3部アモレビエタから4部カンタブリアへ電撃レンタル移籍した理由とは?
心機一転、環境を変える決断を下した2023-24シーズンには、3部のラージョ・マハダオンダへ期限付き移籍。しかし、最終的に4部へ降格したチームのなかで、18試合に出場しながらゴール、アシストともに0と爪痕を残せなかった。
再び3部のアモレビエタへ戦いの場を求めた今シーズン。先発出場を続けていた昨年9月にスペインメディア『RELEVO』のインタビューに応じた中井は、日本代表MF久保建英(23、レアル・ソシエダ)より5年も早くレアル・マドリードの一員になって以降、さまざまな視線を浴びてきた日々をこう振り返っている。
「自分にとっては非常に難しい時間だった。たとえば日本では、自分に関するいろいろな記事が出ている。それでも僕は常にピッチで自分を証明したいと思ってきたし、レアル・マドリードはそんな僕にとても忍耐強く対応してくれた」
中井が言及した「難しい時間」とは、名門レアル・マドリードに初めて所属する日本人選手という肩書きにもたらされるプレッシャーだけでなく、プロの壁に阻まれ、伸び悩んでいるようにも映る現状へ抱く苦しみをもさしていた。
そして、順風満帆に見えたアモレビエタでも状況が一変。ピッチに立つのが難しくなった状況で、中井はシーズン途中で再びプレーする環境を変えた。
新天地ラージョ・カンタブリアは2部リーグで首位に立ち、14シーズンぶりの1部復帰を見すえるラシン・サンタンデールのリザーブチームにあたる。しかし、いま現在の自身の居場所はサンタンデールにも、そしてカスティージャにも、ましてやレアル・マドリードにもないことは中井自身が誰よりも理解している。
保有元となるレアル・マドリードとは、今シーズン終了後の6月末まで契約を結んでいる。リーグ戦が残り13試合となっている4部での戦いで納得させるような結果を残さなければ、新シーズン以降の契約にも影響をおよぼすおそれもある。実質的な背水の陣を敷きながらも、中井はまったく異なる思いも抱いている。
先述の『RELEVO』のインタビューで、中井はこんな言葉を残している。
「僕はサッカーが世界で一番好きだし、だからこそ常に最大の情熱を注いできた。同時にサッカーをやりたくてもできない人がいるなかで、プロでプレーしている僕はある意味で特権をもっている。そうした状況に感謝の気持ちを抱きながら、サッカーに向き合っている。これは僕の両親の教えでもあるんです」
スペインの4部リーグは、90チームが5つのグループに分かれて行われている。グループ1に所属するラージョ・カンタブリアは21試合を終えて6勝7分け8敗の勝ち点25で、18チーム中で12位と苦戦している。
そして、9日(日本時間10日)の次節で、ラージョ・カンタブリアは3位につける難敵レアル・アビラのホームに乗り込む。10歳でスペインの地へわたり、未知なる戦いをスタートさせて11年目。胸中に危機感と感謝の思いを共存させながら、中井はキャリアのターニングポイントになりうる戦いへ真正面から臨もうとしている。