
なぜファジアーノ岡山は歴史的1勝を開幕戦で刻めたのか…「貫いたチャレンジャー精神」Jの“台風の目”となる可能性は?
J1昇格を目標に毎オフのように数多くの選手が入れ替わってきたなかで、木村がしっかりと受け継ぎ、いまも実践するのは岡山の“イズム”でもある。
前線から愚直に相手ボールを追い続ける。相手にシュートを放たれれば臆さずにブロックに飛び込む。球際の攻防でもいっさい怯まない。当たり前のプレーを全員が90分を通して持続させた結果が、昨シーズンのJ2リーグで最多となる20ものクリーンシートであり、舞台をJ1に移した開幕戦でも京都を零封した。
チームの揺るがぬ土台に、新戦力がさらなる彩りを加えた。
清水や柏レイソルでJ1通算158試合に出場したDF立田悠悟(26)は、191cmの長身を生かした屈指のエアバトラーぶりを3バックの右で何度も発揮。相手の攻撃を弾き返す強さを岡山に加えれば、横浜F・マリノスから加入した加藤は、利き足の左足に搭載された高精度のキックでチームのJ1初アシストをマークして声を弾ませた。
「スローインでも何でもいいから、チーム初の何かがほしいと思っていたけど、まさか、まさかのアシスト。いままでアシストはそれほど多くなかったので」
そして、大宮アルディージャ、柏、浦和レッズでJ1通算42ゴールをマークしている江坂。京都戦でゲームキャプテンを託され、追加点の起点となる絶妙のサイドチェンジを成功させた百戦錬磨のベテランへ、木山監督も賛辞を惜しまない。
「われわれに時間とスペースを与え、起点も作ってくれる彼の存在は本当に大きい」
蔚山との契約満了に伴い、3シーズンぶりの日本復帰を考えていたオフに受けた岡山のオファー。江坂は「新たなチャレンジがしたかったなかで、J1へ初挑戦するクラブに自分も乗っかりたい、という思いが強くなった」と移籍で加わった経緯を振り返ったことがある。京都戦後にはこんな言葉を残している。
「J1のチームとも戦えると、開幕戦で感じられたのはみんなの自信になる。岡山のファン・サポーターの方々も、自分たちのチームはできると感じてもらえたと思う」
33年目を迎えたJ1リーグの歴史で、初めて昇格したシーズンの開幕戦で勝利を収めたのは岡山で5チーム目。2000年のFC東京、2002年のベガルタ仙台、2005年の大宮アルディージャ、2009年のモンテディオ山形はいずれも残留している。