
なぜファジアーノ岡山は歴史的1勝を開幕戦で刻めたのか…「貫いたチャレンジャー精神」Jの“台風の目”となる可能性は?
勝利を介して膨らませた自信が、その後の戦いを支える原動力になった。同じ図式が岡山にも、という期待が膨らむなかで、江坂は韓国でプレーしながらチェックしていた昨シーズンのJ1から、昇格組が上位を占めた結果からヒントを得たと明かす。
「町田ゼルビアや東京ヴェルディはいい教科書というか、ベースとなるJ2での戦いのレベルをさらに上げながら、プラスアルファとして新しく加入した選手たちがそれぞれの能力を発揮していた。両チームの真似をするわけではないけど、そのあたりは自分たちも見習う部分はたくさんあると思っている」
特に昨シーズンに初めてJ1へ挑んだ町田は、開幕戦でガンバ大阪と引き分けている。その後はJ2リーグを席巻した、プレー強度の高い戦い方をベースに快進撃を開始。最後はやや失速したものの、それでも3位に食い込んだ。王者・ヴィッセル神戸を含めて、強度の高さはJリーグのトレンドでもある。
実はその町田も岡山を意識していた。今シーズンの開幕を前にして、森保ジャパンに名を連ねる守護神の谷晃生(24)は気になるチームとして、キャンプ中のトレーニングマッチで鹿島アントラーズに勝利した岡山をあげていた。
「強度が非常に高いチームという印象を受けたし、得点力のある江坂選手も新しく入ってきたなかで、相手としてすごく脅威に感じている」
東を神戸がいる兵庫県、西のサンフレッチェ広島の広島県にはさまれ、J1クラブが存在しなかった歴史に終止符を打った岡山県も盛り上がりをみせる。
京都戦のチケットは販売開始わずか5分で完売。敵地に乗り込む22日の横浜FCとの第2節をへて、再びホームのJFE晴れの国スタジアムにガンバを迎える26日の第3節も、平日のナイトゲームにもかかわらずすでに完売している。
そして、1万4575人が熱い視線を送り、チームだけでなく6人もの選手がJ1デビューを果たした歴史的な一戦で、勝利をもぎ取る至福の喜びを共有できた。それでも岡山を象徴する木村は、チームの今後をこう語る。
「何も驕ることなく、しっかりと地に足をつけて、岡山らしく全力で目の前の1試合1試合へチャレンジャー精神をもって全力で戦っていく。それしかないですね」
実は昨シーズンのリーグ戦とJ1昇格プレーオフから、岡山には「先制した試合は負けない」という不敗神話がある。舞台がJ1に変わってもそれは継続され、18勝3分けと「21」にまで伸びた。決して背伸びをせず、等身大の戦いを継続させていくほど、岡山の目標もJ1残留から台風の目へと変化していく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)