
中日で再び「令和の米騒動」は起きるのか…「やらないが一理ある」井上監督はSNSで批判を浴びた立浪前監督時代の選手食堂から炊飯器撤去の方針をどうするのか?
井上監督は、立浪前監督が残した“負の遺産”を「天才の立浪さんはハイレベルな野球を望んでいた。だから『これだけやっても認められないんだ』とあきらめた部分が去年の選手にはあったのかも」と見ている。
今キャンプでは、選手と積極的にコミュニケーションを取り、自分の理論を選手に押し付けて「否定」から入るのではなく、まずは「肯定」から入ることを心掛け、モチベーションを最大限に引き上げることに全力を注いでいる。
「僕はテンションとチームの束(たば)感、一体感でチームの戦力は上がると信じているんです。モチベーションを上げることで戦力が上がることに期待しているんです」
そこが最下位脱出のひとつのキーワードだと考えている。だからこそ食事の面でも、制限はつけず選手の希望に沿うことにしたのだろう。
一方で2軍監督時代には若い選手に「しっかり量を食べろ」と言い続けてきた。
「見ていると、好き嫌いの多い選手が少なくなかったんです。肉、肉、肉ばかり。『おいたまには野菜も食えよ』と声をかけたりしていましたが、やはり時代は変わっています。今の子はアレルギーを持っている選手もいるので『食え、食え』だけではダメで、そういった面にも気をつけていました。でも若い選手がプロの体を作っていくには、まず口からモノを入れないと身にはなりません」
井上監督は監督就任にあたって複数年契約を結んだ。
3年連続最下位のチームを再建するのは、立浪前監督が、種を蒔いて育て始めた若手をさらにレベルアップし、次の世代の底上げをはかることが急務。そのためには「食」への取り組みは欠かせない部分でもある。
中日の球団フロントの一人がこんな話をしていた。
「立浪前監督のときに、令和の米騒動だなんて、おもしろおかしく報道されたが、選手の食事については、与田監督、立浪監督と続けて、こうしたいという強い提案があった。球団としては、栄養士をつけてしっかりと管理しているが、監督は年間を通じてのコンディション、そして若手の先を見据えての体作りに重要な食事が気になるようなんだよね。阪神さんも24歳以下の選手のキャンプ中の外食に制限を設けて、食事に気にかけるような報道があったけれど、中長期で選手のフィジカルを底上げしていくには、食の問題には神経を使わなければならないと思う」
そこはなかなか目に見えない部分でのサポートになるが、ガラっと雰囲気の変わった今季の中日で「令和の米騒動」は起こりそうにはない。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)