
那須川天心の元世界王者モロニーへの挑戦は本当に「まだ早すぎる」のか…陣営が公開練習で「誰が言ってんだ?」と嚙みつき“ザワザワ”…裏にある“サウスポー苦手”の致命的弱点
5年前には、米国ラスベガスでの無観客試合で“モンスター”井上の強打に7回までは耐え、世界戦を5試合も経験しているキャリアが、モロニーのプライオリティでもあるが、アピールしたのはそこではなかった。
「これまでたくさんの相手と拳を交え、様々な状況に適応してきた。だが私と天心の違いは経験ではなく志、気持ちの強さだ。天心よりも勝ちたい気持ちが強い。そこが大きな違いだと思う」
天心にとって、このモロニー戦は、WBO世界同級王者の武居への挑戦に向けての最終テスト。判定勝利だった武居との違いを見せつけて、対戦気運を盛り上げると同時にアンチも含めたファンに世界挑戦を納得させることが目的にある。
モロニーにしてみれば、踏み台にされるわけだが、天心の野望を打ち砕けば、逆に武居とのリマッチの可能性も出てくるかもしれない。
「天心にとって人生を変える試合。私にとってもチームにとっても人生を変えるチャンスなんだ」
その思いがモロニーが強調した「気持ちの違い」。
「目の前の天心だけに目を向けている。この試合が大事。今後、武居とリマッチができてタイトルを取るチャンスがあればいいが、目の前の試合に集中している」
ハイダートレーナーは顎のあたりを触りながらニヤついた。
「天心は初めて世界レベルの選手と対戦することになる、この試合でどう動くか。彼の顎がどう反応するかが、楽しみだ」
抜群の反射神経と高いディフェンス力を持つ天心は、ここまで5戦で深刻なダメージを負う被弾をしたことはない。ハイダートレーナーが、顎を触ったのは「打たれ弱いんじゃないのか?」の挑発である。
天心の元世界王者への挑戦は本当に早すぎるのか。実は。この元世界王者には致命的な弱点がある。武居との世界戦で露呈した“サウスポーアレルギー”だ。
会見で改めて問うと、筆者の日本語での質問がまだ終わっていないのに、ハイダートレーナーが、「サウスポーと言ったな。それはいい質問だ」と口を挟んだ。
そして「サウスポーはボクシング界からバン(失く)したい」と冗談を返して、モロニーも苦笑いを浮かべた。
ーー天心は武居よりスピードがありもっと動く。どうつかまえるんだ?
そう聞くとハイダートレーナーは熱弁した。
「あなたの意見は正しい。武居戦では最終ラウンドまで自信をもった動きができていなかった。自分達は作戦ミスを犯した。勝ち切ることができなかった。でも大きな敗戦からたくさんのことを学んだ。今回は2人のサウスポーに連続で準備できるというありがたい経験ができた。武居と天心は左利きは共通点だが、違う選手。武居はとてもスキルがあってパンチがある。天心は動きとスピードで勝負している。対策はしてきた。前回と今回ではジェーソンは違ったタイプのビースト(野獣)になっている」
武居戦では最終ラウンドにようやく距離をつめてグロッキー寸前まで追い詰めたが、そこまでは武居のサウスポーの間合いに手を焼き、ほぼペースをつかめていなかった。入り方、仕掛け方に苦労していた。