
「キャンプでも1回もやったことがない」東京ダービーを制したJ1町田ゼルビアの今季初勝利の裏に黒田監督の“名采配”あり
さらに西村、藤尾、相馬に代わっていたナ・サンホ(28)の形も初めてだったが、中山と西村はキャンプから個人的にホットラインを磨いていた。さらに苦境になるほどオ・セフン一辺倒になりがちだった昨シーズンの攻撃から脱却すべく、ビルドアップを駆使した形や、左右からのクロスに飛び込む形もキャンプからチームとして取り組んできた。
両チームともに無得点と、焦れるような攻防が続いた試合展開にも、昌子は「僕たちにとっては決してネガティブではなかった」とこう続けた。
「昨シーズンも、長く0-0のままいく試合は多かった。空気的に引き分けそうだな、というなかで、僕的にはセットプレーが大事になるかなと思っていたんですけど、流れのなか新加入の拓真が決めた。間違いなくチームにとってプラスの勝利ですね」
町田は根本的な部分で「失点しない、負けない、連敗しない」を掲げる。岡村の復帰が中山の左ウイングバック固定を導き、そのなかで西村が初体験の形にすぐに順応して、かつて日本代表にも招集された得点感覚を土壇場で発揮した。
いわば岡村、中山、西村を介して3つの“追い風”が吹いた敵地で、昨シーズン2戦2勝だったFC東京から三度もぎ取った勝利に、黒田監督も思わず目を細める。
「ゼロのままでいけたからこそ、西村の得点が生まれたと思う。組織として大きく崩れないように、選手たちがしっかりと軌道修正してくれたからこそ、今日の結果に繋がった。よかった部分を引き続き維持、継続できるようにやっていきたい」
3位に食い込んだ昨シーズンの快進撃を支えた武器のひとつに、リーグ最少の34失点を誇った堅守もある。初勝利とともに戦い方の原点をも思い出した町田は、開幕戦で喫した逆転負けのショックをも払拭し、気持ちも新たにホームの町田GIONスタジアムに東京ヴェルディを迎える、26日の第3節への準備を進めていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)