
衝撃告白!WBA世界ベルトへ挑戦の比嘉大吾の“名参謀”が「負けたらトレーナーを辞める」…進退をかけたハッパに“沖縄の倒し屋”は応えることができるのか
衝撃の告白だった。
「負けたら引退」を自らに課してリングに上がるボクサーは珍しくないが「負けたら引退」の悲壮な覚悟を表明したトレーナーを筆者は知らない。
「大吾が復帰を決意した時にその話をしたんです」
武居戦に敗れ、一度は引退を決意した比嘉に昨年11月に堤への世界挑戦の話が舞い込んだことを伝えた。
「1週間時間を下さい」と即答しなかった比嘉から「やはりボクシングが楽しい。世界戦ならやります」との連絡があったとき、野木トレーナーは「この試合で負けたらトレーナーを辞める」との決意を比嘉に明かしたという。
「大吾が武居戦に負けて辞めると言ったところで終わりだと思っていたんです。でも、おそらくこの試合で負けたら大吾がまたやるとは思えない。ならば、そのときは、もう私も、そうしよう(引退)かなと。ジムには見ている木村(吉光)もいます。彼をどうするかは、今はおいといて、そう決断しました。この3か月間余り、大吾と一緒にいさせてもらった時間が貴重でした。でも勝てば、またできる。負ければもうできない。そういうことなんです」
野木トレーナーが担当しているのは比嘉だけではなく、元OPBF東洋太平洋、元WBOアジアパシフィックスーパーフェザー級王者の木村もいる。
――まだ64歳。引退する年齢ではないでしょう。野木トレを主催し、ジムの枠組みを超えてボクサーの底上げに尽力されているじゃないですか?
「この前の公開練習の映像を見たときに思ったんですよ。もう時代は若いトレーナーに変わっていくべきじゃないかなと」
野木トレーナーは白井・具志堅ジム時代から比嘉とコンビを組んできた“名参謀”。シドニー五輪の女子マラソン金メダリスト、高橋尚子を育てた故・小出義雄氏に師事した異例の経歴を持ち、階段を使った通称「野木トレ」は、ジムや格闘界の枠組みを超えて多くのボクサー、格闘家を育成してきた。
その野木トレーナーの「負けたら引退」の決意は、自らの進退をかけて愛弟子に何かを伝えようとしているのだと思った。
「自信はあります。気持ちのピースがはまって、気持ちの勝負で制することができれば、望む結果を得られると思っています。技術は大吾が上なんです」
野木トレーナーは堤戦の勝負の分かれ目はメンタルだと考えている。
野木トレーナーは昨年9月の武居戦の最終ラウンドの話を出した。
比嘉は11ラウンドにダウンを奪った。だが、第12ラウンドにまさかの失速をして、ジャッジの3者が武居を支持した。もし第12ラウンドを比嘉が取っていれば、判定は2-1でひっくり返っていたのである。
「僕らはハッパをかけて送り出したんです。自分に勝ってこい!と。でも大吾の計算の中で打ち合って倒れて2点を失うより、食いしばって、しのぐような戦いになってしまった。しかも一発効かされていました。失速の理由はスタミナ切れや体の異常ではないんです」