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U-20W杯出場権を獲得したキャプテンDF市原吏音(写真:新華社/アフロ)
U-20W杯出場権を獲得したキャプテンDF市原吏音(写真:新華社/アフロ)

「頭に浮かんだ勝利のシナリオ」W杯出場を決めたU-20代表がイランとの“鬼門のPK戦”を制することができた理由とは?

 中国・深圳で開催されているAFC・U-20アジアカップでベスト4に進み、今秋にチリで開催されるFIFA・U-20W杯出場権を獲得したU-20日本代表の船越優蔵監督(47)、キャプテンのDF市原吏音(19、RB大宮アルディージャ)らが24日、オンライン会見に臨んで心境を語った。前日23日のU-20イラン代表との準々決勝は1-1のまま、歴代の日本代表が苦手としてきたPK戦に突入。さらにコイントスで勝った市原が不利とされる後攻を選んだなかで、なぜ日本は勝利できたのか。

 

 日本が苦手としてきたPK戦で、想定外の事態が起こっていた。
 勝者がU-20W杯の出場権を獲得するイランとの準々決勝は、延長戦を含めた120分間の攻防を終えても1-1のまま決着がつかない。天国と地獄とを分け隔てるPK戦を前にして、キャプテンの市原はコイントスで立て続けに勝利した。
 最初の勝利で、市原はゴール裏に日本のサポーターが陣取るエンドでのPK戦を選択。さらに次の勝利で後攻を選択し、意気揚々と日本のベンチ前へ戻ってきたキャプテンを出迎えたのは、驚きの表情を浮かべる仲間たちの姿だった。
「僕の独断で後攻を選んで、みんなへ言いにいったら『エッ』みたいな顔をしていたんですよ。なぜなのかなと思ったら、PK戦は先攻のほうが有利になる、というのを知らなくて。僕としては、後攻のほうが有利だと思っていたので……」
 PKの成功率は約80%とされている。ゆえにPK戦では先攻のチームほうが、後攻のチームにプレッシャーを与える意味で有利となる、と指摘する統計学もある。もっとも、これは必ずPKを成功させる、という前提に立ったものだ。
 思い出されるのは2022年のカタールW杯。PK戦に突入したクロアチア代表とのラウンド16で、コイントスに勝った森保ジャパンは先攻を選択した。しかし、1番手の南野拓実、2番手の三笘薫、4番手の吉田麻也が相次いで相手キーパーにセーブされ、4度目の挑戦でも悲願のベスト8進出を果たせなかった。
 カタールの地で喫した無念の敗退を機に、日本サッカー協会はPK戦対策を講じはじめた。森保ジャパンが臨む日本国内での国際親善試合でのPK戦導入は、テレビ放送などの関係で見送られたが、アンダー世代の海外遠征では融通がきく。
 例えば昨年11月にU-19代表が実施したメキシコ遠征。1-1で終えたU-19メキシコ代表戦後に、国際親善試合では異例となるPK戦が実施され、日本が2-1で勝利している。当時もチームを率いた船越監督が言う。
「協会同士の話し合いで、同点で終わった場合にはPK戦を実施しよう、となっていた。真剣勝負のなかで、本当に緊張感があるPK戦ができたと感謝している。カタールワールドカップの後から、トレーニングでPKも取り組みながら選手個々のデータを取り、相手チームに関する情報収集なども行ってきた。前回のU-20アジアカップも準決勝でPK戦の末に負けているし、即効性はなかったかもしれないが、それでも継続していけば成果は出てくると、いまでは思っている」
 昨年のメキシコ遠征のメンバーからは、市原を含めた17人が今回のU-20アジアカップに臨んでいる。PK戦独特の雰囲気に慣れていた、というアドバンテージがあり、イランとの大一番前日には実戦さながらのPK戦も実施して本番に備えた。可能ならば所属チームで普段からPKを蹴るように、という声も船越監督はかけていた。

 

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