
「頭に浮かんだ勝利のシナリオ」W杯出場を決めたU-20代表がイランとの“鬼門のPK戦”を制することができた理由とは?
加えて、市原に脈打つポジティブ思考もプラスにはたらいた。
「なぜかはわからないけど、コイントスで自分が勝ったときに、勝利へのシナリオのようなものが頭のなかに浮かんできた。5人で絶対に終わる、最後は自分が蹴って勝つと何となく感じた部分もあって、迷わず後攻を選びました」
迎えたPK戦。よりプレッシャーを感じたのは先攻のイランだった。
日本の守護神、荒木琉偉(17、ガンバ大阪)が身長194cm体重85kgの巨躯を介して放つオーラを前にして、ギリギリを狙わないといけないと意識しすぎたのか。1番手がクロスバーに当てると、2番手もゴール右に外してしまう。
対する日本は、選手の特徴や癖、相手キーパーとの相性を含めて船越監督がコーチ陣と話し合って決めたオーダーが奏功。MF中島洋太朗(18、サンフレッチェ広島)と今大会後に渡英して、プレミアリーグのサウサンプトン入りするFW高岡伶颯(17、宮崎・日章学園高3年)が確実に決めてリードを広げた。
3番手のDF髙橋仁胡(19、セレッソ大阪)こそ相手キーパーにセーブされたが、4番手のMF佐藤龍之介(18、ファジアーノ岡山)も成功。イランも3番手以降が全員決めたなかで、5番手の市原が望んでいた通りの状況が生まれた。
タイとの今大会初戦で、試合中に獲得したPKを右へ決めた市原が言う。
「僕は右が得意なのでタイ戦では右へ蹴りましたけど、相手にスカウティングされているはずだし、自分の前に蹴った4人の味方に対して、相手のキーパーがすぐに跳んでいた。なので、右へ蹴ったら止められると思って、最後はイチかバチかで」
右へ跳んだ相手キーパーを見越して、大胆不敵にもど真ん中に蹴り込んだ市原の一撃とともに、日本の4大会連続12度目のU-20W杯出場が決まった。岡田ジャパンがパラグアイ代表に屈した2010年の南アフリカW杯を含めて、日本が苦手としてきたPK戦には運任せなのか、それとも練習が必要なのか。市原はこう答えた。