
横浜DeNAのバウアーが体重を4キロ絞って古巣復帰…10勝の2年前より1か月早い開幕ローテー参戦で「沢村賞」に現実味
無双したシーズンに映ったが、実際は違った。本拠地メキシコシティ・イスタカルコの標高は2242メートル。高地ゆえに打球がよく飛び、さらにはコレラに罹患。体中のあらゆる免疫も下がった1カ月間を、苦笑いを浮かべながら「死にかけた」と振り返ったバウアーは、いまではメキシコでの日々に感謝している。
「メンタル的にも、さらに強くなれたのではと思っている。メキシコは高度が高いので、変化球を思うように投げられなかった。日本は逆に湿度が高いのでよりボールが動くし、配球や球種がさらによくなると思っている」
バウアーは2022年4月に知人女性へのDV疑惑問題で、MLB機構から324試合と長期にわたる出場停止処分を受けた。バウアー側の異議申し立てを受けて処分は194試合に短縮されたものの、当時所属していたドジャースは2023年1月にバウアーとの契約を解除。その後の同年3月に横浜入りが電撃発表された。
しかし、キャンプ終了後の来日で日本中を驚かせたバウアーの一軍デビューは5月にずれ込んだ。その後も日本の野球への適応や怪我に苦しみながらも、19試合に登板して10勝4敗、防御率2.76の好成績を残した。
日本の野球をよく理解し、旧知のチームメイトたちにも囲まれている今シーズン。大きなアドバンテージがあるとバウアーは自信を寄せる。
「前回よりも仕上がっていると感じているし、前回は実戦から離れていた期間が長くて、そこからの野球界復帰だった。今回はそういったブランクがなく、しっかりしたプレー期間もあってスムーズな入りができる。2年前の防御率2点台から積み上げてよりよい結果をもたらしたいし、開幕からフルスロットルでやっていきたい。自分としては『ここで投げてくれ』と言われたらどこでも投げる。個人的には中5日だろうが3日でも4日でも、どんなスケジュールでも投げたい。投げるのがとても好きなので」
究極の目標を、前回と同じくチームの勝利に置く。2年前は果たせなかったリーグ優勝に貢献し、海の向こう側で知った日本シリーズ制覇を連覇へと変える。そのうえで個人的な目標も今回は設定した。復帰が決まった1月下旬に、横浜を介して掲げた沢村賞獲得をバウアーはあらためて明言した。
「サイ・ヤング賞と沢村賞は、どちらも権威のある賞だと思っている。MLBでサイ・ヤング賞はとても難しいし、NPBでも沢村賞は難しい。両方を受賞した投手はこれまでにいないので、それを成し遂げるのが私の喜びになる。もっとも大事にしている目標を逃すような状況になれば、とても悲しい気持ちになるだろう」
バウアーは来日翌日の2月28日から、すでに神奈川・横須賀市内の球団施設DOCKで始動している。良好なコンディションに加えて投球の幅も広げ、日本にすぐ順応できると自信も抱くバウアーは、現時点で約94万5000人の「Trevor Bauer」の登録者数を100万人の大台に乗せる夢も抱きながら、開幕へ向けて調整を重ねていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)