
拳四朗がガンで亡くなった“大恩人”プロレスラー西村修さんに王座統一を誓う…「最後までレスラーだった。勝ってお参りしたい」試合前だが8日の告別式に参列
プロボクシングの2階級制覇王者でWBC世界フライ級王者の寺地拳四朗(33、BMB)が3日、都内の三迫ジムで、3月13日に両国国技館で対戦するWBA世界同級王者、ユーリ阿久井政悟(29、倉敷守安)との統一戦に向けての練習を公開した。2月28日にガンのため53歳の若さで逝去したプロレスラーの西村修さんは、4年前の謹慎期間中の社会貢献活動で世話になった大恩人。最後まで病と闘った西村さんの不屈の精神を継承して「勝ってお参りしたい」と墓前に2つのベルトを捧げることを誓った。

ユーリのクセは盗んだ
「激闘はしない。無理に倒しにはいかない」
3年前に現IBF世界ライトフライ級王者の矢吹正道(LUSH緑)との再戦に3回KO勝利して以来、世界戦6試合で5KO。フライ級に上げた昨年10月のクリストファー・ロサレス(ニカラグア)とのWBC王座決定戦も11回TKOで勝利した。アウトボクサーからすっかり倒し屋にイメージチェンジして、評価も人気が上昇してきたというのに、拳四朗は、待望の統一戦を前に意外な言葉を口にした。
「自分は打つけど、できるだけ打たれないようにしたい。12ラウンドを戦うことを想定に入れている。判定とかも全然ありでしょう」
勝利のポイントはユーリのプレスに負けて下がらないこと。
「相手のペースになるので、それだけは避けたい。距離感、ジャブ、ワンツーで(前進を)止められます」
ユーリ自身は「パワーファイターではない」と否定しているが、警戒すべきは、KOの威力を秘めた左フック、右ストレートの一発だ。無防備な殴り合いでは、それを被弾するリスクがある。
ここまで160ラウンド近くのスパーを消化してきたが、2月24日にWBA世界バンタム級王者の堤聖也(角海老宝石)に挑み、ドローでタイトルを獲得できなかった比嘉大吾(志成)とも4ラウンドのスパーを行った。これは比嘉の前に出てくるプレスを“仮想ユーリ”に見立てたもの。比嘉は、本番型でスパーでは弱いタイプだが、拳四朗が自由自在にさばいていたという。
一方で「ユーリは打たれ強いとは思わない」とも言う。どこかにKO決着の意識は残っている。その「倒そう」とする「欲」も大敵である。
ボートレーサーを目指したことのある拳四朗は、最近、気分転換のためにボートレースに興じるようになった。
「基本負けますよね(笑)。難しい。(競艇は)6艇しかないのに当たらないですものね。考えに考えたら1号艇からになるんですけど、オッズが安いので買いたくない。欲が出るので1号艇を買わずに外す(笑)。人間は欲に勝てない。今回は、倒すという欲を出していない?そういうことか。ボクシングに教えてもらった」
ボートレースは、最内枠の1号艇が有利な競技で、そこから舟券を買うと的中率は上がるが、払い戻し金は低い。拳四朗は、“当たらない”ボートレースに重ねて、自らの「倒したい」という「欲」を制御することを誓った。
拳四朗はユーリと過去に計4クールほどスパーリングを行っている。8ラウンドのロングスパーも2度敢行した。最後は昨年の1月。拳四朗が圧倒していたという。
「スパーは関係ない。実戦になると違う。警戒しているけれど、自信はある」
加藤トレーナーは、その中でユーリのクセを見抜いた。改めて2人で試合映像も何度も見直している。拳四朗も「クセって治らない」と不敵に明かす。2月27日にユーリの公開練習を視察した加藤トレーナーが「確認したいことがあった」と話したが、そのひとつが「クセ」だったのかもしれない。