
武尊は“霊長類最強女子”から何を学んだのか…3.23「ONE172」ロッタン戦に向けて「壊れてもいい。次が最後の試合のつもりで」との壮絶覚悟を明かす
公開練習では、武尊はシャドーと2分1ラウンドだけミット打ちを見せた。
激しい打撃音をさせて左右のミドルキック、ワンツーからローのコンビネーション、そしてワンツー、ワンツーからの後ろ回し蹴りのコンビネーションを披露すると、吉田さんは「近くで見ることがないのですごい迫力と音。力が入ったね。いいんじゃないですか。素人ですがそう感じます」と仕上がりに太鼓判を押した。
武尊が「早い段階から減量で落として試合ができる体重をずっとキープしている。明日でもいける」と調整状況を明かすと、吉田さんは、減量苦がなく1週間前にも追い込みを続けた自らの現役時代の試合前調整に重ねてこう称賛した。
「準備ができている。気合が入っている。明日いける、というその気持ちが大切。もうちょい(時間が)あるからという考えより、いつでも試合ができるという考え方。絶対に勝ちにいく気持ちができているなと感じた。いけると思っています」
1年越しの悲願の対戦である。
武尊は、昨年1月28日に有明アリーナで行われた「ONE165」のメインでロッタンと対戦予定だったが、ロッタンの負傷により中止となり、急きょ、ONEフライ級キックボクシング世界王者スーパーレック・キアトモー9(タイ)の王座への挑戦に切り替わった。激戦の末、0-3判定で敗れ、武尊は、車いすで病院に直行した。ローキックを浴びた両足の筋肉を断裂、左膝は骨折していた。
前ONEムエタイ王者のロッタンは、ボクシングに転向した那須川天心を最も苦しめた男として知られる。2018年にRISEで対戦したものの、本戦では決着がつかず延長戦での僅差判定でロッタンが敗れた。格闘界には三段論法は成立しないが、2022年6月の「THE MATCH」で天心に敗れた武尊にとってみれば、ロッタン越えは、間接的な天心へのリベンジマッチにもなる。
長いリハビリを経て武尊は、9月にタイで復帰戦に臨み、リンタン・ジン(ミャンマー)からダウンを奪われながらも逆転の2ラウンドKO勝利を飾った。一方のロッタンは、昨年11月の「ONE 169」でジェイコブ・スミス(英国)と対戦して判定勝ちしたが、前日計量で体重超過したため、ONEムエタイ世界フライ級王座を剥奪された。ロッタンは、2023年のスーパーレック戦でも体重超過の“前科”がある。ONEでは、選手の健康を管理するため、極端な水抜きをさせないため体内の水分量を測るハイドレーションテストを実施しており、今回の試合では、その減量をクリアするかどうかの問題が最後までつきまとっているが、スーパーレックと並び、世界最強キックボクサーの一人と言って過言ではない。