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最終ラウンドに拳四朗がユーリに逆転TKO勝利した(写真・山口裕朗)
最終ラウンドに拳四朗がユーリに逆転TKO勝利した(写真・山口裕朗)

壮絶決着!なぜ拳四朗は最終回に「覚悟を決めた前進」を続けたユーリに逆転TKO勝利できたのか…“名参謀”の頭脳的戦術変更が2階級WBC&WBA統一王者誕生の転機

 ユーリは、拳四朗の勝利者インタビューの途中で、切り裂かれた口元をおさえてリングを降りた。ずっと涙が止まらなかった。そこには勇気ある敗者への観衆からの大きな拍手が待っていた。ユーリは、怪我の緊急処置のため記者会見には出ず病院へ直行した。
 試合後のリング上で、拳四朗は左肩に新しいWBAのベルト、右肩に持っていたWBCのベルトをかけた。
「めちゃくちゃ重みがあります」と、統一王者の“価値”を噛みしめていた。
 セミファイナルでは、疑惑のダウンシーンがあったものの、WBO王者のアンソニー・オラスクアガ(米国)が大善戦の京口紘人(ワタナベ)を3-0判定で下してタイトルを防衛した。そのオラスクアガとの3団体統一戦への期待もあるが次戦の展望を聞かれた拳四朗が出した名前は、米「リング誌」のパウンド・フォー・パウンドランキングで6位に評価されているひとつ上の階級の王者だった。
「次はもっとより強い相手。スーパーフライ級のバムとぜひやりたい。みなさん期待してください。絶対勝ってみせるんで」
 拳四朗はライトフライ級王者時代から“バム”ロドリゲスとの対戦を熱望していた。ロドリゲスは21戦無敗の2階級制覇王者で2024年6月には“レジェンド”ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)を7回に沈めてスーパースターの世代交代をアピールした強打者である。
 オラスクアガとは、ライトフライ級王者時代の2023年に対戦して9回TKO勝利しており、モチベーションを作りにくい。「より強い相手」を求めるなら、3団体統一戦ではなく、一階級上の王者なのだろう。加藤トレーナーも「スーパーフライまでは全然いける」という見方をしている。
 ただロドリゲスは、サウジアラビアの「リヤドシーズン」の興行で元4階級制覇王者の田中恒成(畑中)からベルトを奪ったWBO王者のプメレレ・カフ(南アフリカ)との統一戦プランが浮上しており、また高額なファイトマネー契約をマッチルームと2試合結んでいるためすぐに実現することは不可能だ。拳四朗は「井岡さんもいいすっね」と、元4階級制覇王者、井岡一翔(志成)の名前も口にしていた。井岡は大晦日に対戦が前日にインフル罹患で中止となったWBA世界同級王者のフェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)と5月に再戦予定。この世界戦の勝ち負けによるだろうがWBAのベルトの方がハードルは低いのかもしれない。
 またユーリも、肉体改造の成果からスーパーフライ級への転級を示唆しており、もしかすれば、2人の再戦が階級を変えて実現するかもしれない。
 ユーリとの激闘で拳四朗は自らの可能性を広げてみせた。
 ノビシロもある。
 今回の統一戦では加藤トレーナーの指示を仰がず、「自分でリング上で考えること」をテーマにしていたが、「試合になると難しかった。冷静に考えてられなかった。トレーナーの声でやっと動けた」と振り返る。
「試合と練習は違う。ボクシングは難しい。それを次へつなげられたら」
 今が絶頂期とも言える拳四朗が発した「ボクシングは難しい」の言葉に重みがあった。その永遠の命題が拳四朗のさらなる未来への道標である。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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