
「大谷翔平は世界の宝だが、ドジャースは物見遊山。OP戦の延長みたいで本番モードになっていなかった」球界大御所が見たMLBの東京シリーズとは?
ドジャースとカブスの東京シリーズ(18、19日東京ドーム)は日本に大きなインパクトを与えた。大谷翔平(30)が今季1号を放ち、山本由伸(26)が今季1勝をあげ、佐々木朗希(23)が163キロデビューを果たして“世界一”ドジャースが連勝スタートを切った。カブスの今永昇太(31)も4回ノーヒット投球で存在感を示した。巨人OBで、ヤクルト、西武で監督、ロッテではGMまで務めた球界大御所の広岡達朗氏(93)の目には東京シリーズの戦いはどう映ったのか?
「ラーメンを食べただの、ディズニーに行っただの…」
「ドジャースロス」「大谷ロス」が叫ばれるほど大きなインパクトを残したメジャー公式戦の東京シリーズ。ドジャースは18日のカブスとの開幕戦で、山本が5回を1失点に抑える好投を見せ、5回の大谷の今季初ヒットを口火に逆転劇を演じ、大谷は、9回にも追加点につながる二塁打をライト線に放った。カブス先発の今永も4回をノーヒット。69球の「早すぎる交代」が日米で物議を醸した。
そしてハイライトは第2戦である。
大谷が5回の第3打席で、メジャー移籍以来自己最速となる8打席目で、右中間スタンドへ今季1号を放ったのだ。フェンス際の打球にファンが手を出したことで、リプレー検証となり、カブスの地元メディアである「ブリ―チャーネーション」が「明らかにあの大谷の打球は本塁打でなかった。あきれた判定だ」と審判の判定に異論を投げかけるなどしたが、東京ドームを埋めた4万2000人を超えるファンを熱狂させた。またメジャーデビューとなった佐々木は、3回を投げ痛恨の押し出しを含む5四球と大荒れだったが、最速は163キロをマークし、3三振を奪い、打たれたヒットはボテボテの内野安打1本だけだった。
“世界一”ドジャースは連勝で帰路についた。
だが、広岡氏は、ゲーム内容については「ドジャースはまだ本番モードになっていなかった」と厳しい見方をした。
「どこそこでラーメンを食っただの、寿司を食べただの、ディズニーに行っただのの報道も見たが、彼らは物見遊山だったのだろう。試合ではさすがの集中して気持ちを見せたが、それは表向きで体の動きがついていっていなかった。まだオープン戦の延長みたいな調整試合。アメリカに帰ってからが本番という考え方でチームコンディションを作っていたのじゃないか。すぐにチャーター機に乗ったのは、そういうことだし、その象徴がベッツとフリーマンに大事を取らせて出場させなかったこと。飛車角が抜けてもドジャースがカブスに勝ったのは両チームの戦力の差。選手の給料がどれだけ違うか」
広岡氏が指摘するようにムーキー・ベッツは、インフルエンザに似た症状に襲われ体重が7キロ落ちるほどの体調不良で開幕戦を前に米国へ帰国、フレディ・フリーマンも、当初発表された開幕戦のスタメンには「3番・一塁」で名を連ねていたが、左脇腹の違和感を訴えて、急きょスタメンを外れた。ベンチにいて試合は鼓舞したが打席に立つことはなかった。それでも遜色のないメンバーで戦えるのが、460億円をかけた“世界一”ドジャースの層の厚さだろう。
辛口の広岡氏だが、大谷、山本、今永の3人には最大級の賛辞を送った。
「大谷を見ていると24時間、365日、野球だけを考えているのがわかる。必ず得点に絡むし、監督、コーチ、チームからの信頼を勝ち取っている。メジャー、日本だけでなく、もはや世界の宝だ。ただ心配なのは怪我。決して無理をして欲しくない」
広岡氏は、大谷の二刀流復帰の時期についての懸念があるという。
「おそらく大谷は、自分の体のことを一番わかっている。5月だったマウンド復帰予定が遅れているという報道も見たが、無理をする必要はない。ドジャースのメンバーをみれば、焦って大谷を投手で起用するチーム状況にはない。私は選手生命を考えると、早い時期にもう打者一本に絞るべきだという考えだが、大谷自身がそれを望んでいないのだろう。何年かは二刀流は持つと思う。しかし、二刀流を再スタートさせると、故障のリスクが高まることを周囲が配慮しなければならない」
そう持論を展開させた。