
漫画みたいな「見えないパンチ」をサウジ長官が注目の“超怪物”堤麗斗が公開A級プロテストで披露…相手した元WBOアジア王者は3度もスパーで骨折させられた衝撃過去を明かす
2021年の世界ユース金メダリストでアマ9冠の堤麗斗(22、志成)が21日、後楽園で、史上3人目となるA級プロテストを公開で行い、一発合格。サウジアラビア「リヤドシーズン」の長官がデビュー前からSNSでポストしたほどの“超怪物大物”にふさわしいボクシングを披露して会場をどよめかせた。相手を務めた同門の元WBOアジアパシフィック・スーパーフェザー級王者の木村吉光(28)は「パンチが見えない」と、その凄さの秘密と昨年スパーリングで3度骨折させられた事実を明かした。デビュー戦は5月上旬の予定で、兄の元OPBF東洋太平洋フェザー級王者、WBA世界スーパーフェザー級4位の堤駿斗(25)と“兄弟競演”する方向だ。
後楽園をどよめかせた
彼こそ本物のNEXTモンスターか。
予定されていたメインが中止となり、やや寂しい客入りとなった後楽園ホールが、どよめきに包まれた。公開プロテストの第1ラウンド。堤麗斗が左構えからワンツーを放った瞬間だ。その威力とスピードの違いが、685人のファンに伝わった。
華麗なステップインから第2ラウンドには左ストレートが再びヒット。元WBOアジアパシフィック王者の顔面が大きくのけぞった。
ロープを背負わせると素早くサイドにポジションチェンジして、右フック、左右のアッパーとコンビネーションブロー。コーナーに追ってワンツーの3連発も披露。最終ラウンドとなる第3ラウンドも右フックから入る高速の連打で木村を圧倒。パンチや連打の速度にも、憎いほどの強弱をつけて、最後は左ストレートから左アッパーでプロテストを締めくくった。
実技前に筆記テストも行われていた。得点は90点。準備するマウスピースの個数を問う引っ掛け問題などをミスしたそうだが、JBCはすぐさま合格通知を出した。ロンドン五輪金メダリストでWBA世界ミドル級スーパー王者となった村田諒太、先日プロデビュー戦を飾った2021年の世界選手権金メダリストの坪井智也(帝拳)以来、史上3人目となるA級テスト合格。
堤は、リング上で「プロ資格を得れてホッとしている。ここからが本当のスタート」と自分に言い聞かせた。
東洋大時代にリーグ戦で後楽園のリングは何度も経験しており、公開プロテストに「緊張はしなかった。楽しかったし、プロの雰囲気を少しは味わえた」ともいう。
もし判定をつければ木村の完敗だった。ヘッドギアがなければ倒されていたのかもしれない。だが、木村の名誉のために書いておくと、昨年の大晦日の試合で右拳を痛め、その試合以来、3か月ぶりのスパーリングで、直前には左足首も怪我していた。それでも木村は「100%でやってもああなるんです」と苦笑い。
「左のタイミングがまったく見えないんです」と明かした。
堤の左ストレートは“消えるパンチ”だったという。
「見てわかるように、パパーンという普通のタイミングとは別で、軽くでも芯で打ってくるし、ガードがしにくい。そして打つ前の手の位置がずれない。どんなにうまくても、普通は左を打つ目には、少し手の位置が下がるので、準備はできるが、麗斗の場合はまったく動かないんですよ」
さらに衝撃的な告白もした。
「昨年はスパーで3度骨折させられました」
堤は、昨年から志成ジムでスパーを行っていて、木村は、左のボディ、左のストレートで、右の肋骨を2回、右の胸骨を1回骨折したという。今回のプロテストに向けてのスパーでも、他ジムのアジアランカーを倒しているというから、兄の駿斗に続く、日本人史上2人目の世界ユース金メダルとアマ9冠の実力は本物だ。