
ONEで衝撃80秒KO負けの武尊は本当に限界なのか…「早すぎるストップ」論争には「文句はない。弱かっただけ」と終止符…「ロッタンと再戦したいが」進退についての明言は避ける
格闘技イベント「ONE 172: TAKERU vs. RODTANG」」が23日、さいたまスーパーアリーナで行われ、元K-1王者の武尊(33、team VASILEUS)が元ONEフライ級ムエタイ王者のロッタン・ジットムアンノン(27、タイ)とスーパーファイトで対戦したが、1ラウンド80秒に左フックを浴びて衝撃的なKO負けを喫した。「ストップが早い」「いや効いていた」の物議も起きたが、「文句はない。僕が弱かっただけ」と完敗を認めた。チャトリ・シットヨートンCEOは、武尊から現役続行の意思を聞いたと明かして「1回では終わらない」とロッタンとの再戦を示唆したが、武尊は進退の明言は避けた。
ロッタンの左フックで顎を打ち抜かれる

“聖地”さいたまスーパーアリーナを衝撃が包んだ。
1ラウンドだ。ローを蹴り合って互いに様子をうかがっていた2人が初めて起こした大きなアクションだった。プレスをかけたロッタンが右のローから左フックにつなぐコンビネーションをぶちこむと、その左を浴びた武尊がバランスを崩す。ロープを背にした武尊は、すぐさま反撃を試みようとしたが、そのがら空きの顎を再び左フックで撃ち抜かれた。武尊は真横に吹っ飛んでダウンした。
マットに両膝をついた武尊は、右手で体を支えようとして滑った。それだけでダメージの大きさがわかる。武尊は、片膝を立ててセコンドを見た。トレーナーはジェスチャーで、ダメージを回復させるため、ギリギリまで立ち上がるなと示しているようだった。
プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(大橋)が、昨年5月に東京ドームで行われたルイス・ネリ(メキシコ)とのビッグマッチで1ラウンドにダウンを喫したが、冷静にカウントギリギリまで立たず、できる限りダメージを回復させ、猛ラッシュに巻き込まれることを避けたシーンが重なった。
武尊は、立ち上がりファイティングポーズを取った。だが、レフェリーは両手を交錯させて武尊のKO負けを宣告した。
場内はざわつき異様な静寂に包みこまれた。
SNSでは「ストップが早すぎる」「いや武尊の目は飛んでいた」と物議を醸したが、映像を見直すとレフェリーは、10カウントを数えており、立ち上がったことを認めてはいなかった。議論をするとすれば、「10カウント前に武尊は立ち上がっていたかどうか?」というものだろう。
当初、試合後のインタビューに勝者のロッタンだけが参加予定だったが、特別に武尊が1人で会見に応じた。
会見で「ギリギリ待ったダウンシーンについて」質問をした。
「そうですね、ほんと、うーん、そうっすね、あの…」
数秒間、答えが出てこない。
「カウントについては、ダメージの回復を待っていたんですが、(10カウント内に)立っても、どうなったかもわかんなかった。そこについては、なんの文句もない。自分が弱かっただけと思っている」
潔く、この論争に武尊が終止符を打った。
さらに不用意な左フックを食らった“ミス”について問うと「ミスというか、ちゃんとまだ試合(映像を)見ていないのですが、今の自分の体でできた限界があれかなと思う」と打ち明けた。
武尊の肉体はかなりの悲鳴をあげていたのだろう。
理想を言えば、最初の左フックを浴びた直後にガードを固めて、追撃を封じるべきだった。だが、武尊の本能がそれを許さなかった。
そして「日本大会で大将の僕が勝って締められなかったのが、申し訳ない。出場してくれた他の日本人が頑張っていたのにメインで自分がこんな形で終わったことが非常に申し訳ないなという気持ちです」と謝罪した。