
ONEで衝撃80秒KO負けの武尊は本当に限界なのか…「早すぎるストップ」論争には「文句はない。弱かっただけ」と終止符…「ロッタンと再戦したいが」進退についての明言は避ける
セミファイナルでは、元K-1の2階級制覇王者でジムメイトである野杁正明が“最強のムエタイ戦士”のONEフェザー級ムエタイ世界王者のタワンチャイ・PK・センチャイ(タイ)に戦慄の左フックと、猛ラッシュでTKO勝利するという“大番狂わせ”を演じていた。
野杁はONEフェザー級キックボクシング暫定王者のベルトを手にした。
武尊は入場口で観客が総立ちとなった試合を見ていたという。
「僕よりも下馬評で不利な対戦だったが、それを乗り越えた正明に勇気とパワーをもらった。“(2人で)一緒にベルトを巻かないと意味がない”とずっと言っていて、それも力になっていた」
それだけになおさら“大将戦”で負けたことに懺悔の気持ちが先に立つ。
ロッタンとは1年越しの対戦だった。
「ロッタンと戦うためにONEに来た」
2022年の那須川天心(現在帝拳)との「THE MATCH」で判定負けをし、一度は引退を決意した武尊が、ONEという新たな舞台でリングに戻ってきたのは、キック時代に拳を交えることのなかったロッタンとの試合のためだった。ロッタンは、RISEで、那須川天心に延長戦の末、判定で敗れ、“最も天心を苦しめた男”として知られる。チャトリCEOは、3人の戦いの3段論法を何度も口にしていた。武尊にとってみれば、ロッタン超えは、間接的な那須川天心へのリベンジでもあった。
昨年1月28日に有明アリーナで行われた「ONE165」のメインでロッタンとの対戦が組まれたが、ロッタンの負傷により中止となり、急きょ、ONEフライ級キックボクシング世界王者スーパーレック・キアトモー9(タイ)への挑戦に切り替わった。壮絶な打撃戦の末、0-3判定で敗れ、武尊は、車いすで病院に直行した。ローキックを浴びた両足の筋肉を断裂、左膝は骨折していた。
長いリハビリを経て、復活ロードを歩んだ武尊は、ロッタン戦を前に「最高傑作と言える試合で勝ちたい」と決意を語っていた。
その最高傑作とは?と問うと、「僕は今までチャンピオンだったり、K-1を背負い、日本を背負ってという気持ちがあった。(今回は)自分がやりたいように。殴り合いたいときは殴り合うし、殴るときは殴るし、もらうときはもらう。今まではそういう戦いをやっているようで120%はやっていない。次が最後の試合のつもりで、次の試合で体が壊れてもいい気持ちでこの試合をやろうと思っている」と説明していた。
だが、120%どころか、たった80秒…何もできないまま敗戦を宣告された。
「どうせ倒されるなら、思い切り打ち合いたかったし、殴り合いをしたかった。それが今の率直な気持ち。でも終わったことなんで受け入れるしかない」
その悔しさは想像に難くない。
気になるのは「これが最後の試合のつもり」で挑んだ武尊の進退だ。