
サウジに悔しいドローも久保建英は「信頼しているよ」と名波浩コーチから声をかけられ「苦しい時の受け皿になる」と覚悟を示す
実際、相手ゴール前には前田、菅原、MF鎌田大地(28、クリスタル・パレス)が詰めていた。ゴールに結びつく可能性があったプレーを、反省を込めてとことん検証する姿勢は、自身だけでなくチームメイトたちの刺激にもなっている。
今後へ向けた久保の言葉にも、提言に近い思いが込められていた。
「2試合続けて先発で使ってもらえるのはこれまでになかったので、ひとつ僕が成長した部分なのかなと思っている。その意味でも今日の試合で、もう一度僕がチームを助ける活躍をするのが理想でしたけど、それはかなわなかった。だからこそ、チームに帰ってそういったところも、個人の活躍で救っていければベストかな、と」
次に代表が集まるのはアウェイで豪州と、大阪でインドネシア代表とアジア最終予選の最後の2試合を戦う6月シリーズ。それまでの2カ月あまりで、各々が所属クラブで個の力を高め、再び顔を合わせたときにそれらを融合させる。時間の制約を大きく受ける代表が、レベルアップを果たしていくにはこの道しかない。
そのなかで、ゴールに絡む仕事以外の役割を久保はこう語った。
「苦しいときに受け皿になるとか、周りの選手たちが余裕をもってプレーできるようにしたい。みんな国を背負って戦う部分で少なからず緊張感はあると思うけど、僕はあまりそういうのはないので、僕がみんなの緊張感を和らげるようなプレーができれば」
W杯出場決定とともに、目標にすえるW杯優勝をあらためて掲げた。本大会のグループ分け抽選にも大きく影響するFIFAランキングを、現状の15位から最低でも維持していくうえで勝ちたかった一戦で、前回カタール大会でも露呈した、守備を固めた相手をいかにして崩すのか、という課題を残したまま引き分けた。
アジアに勝てずして世界一を語れるのか、といった指摘も少なからず出てくるだろう。向けられたすべての声を真正面から受け入れ、そのうえで一喜一憂せずに前へと進んでいく。久保自身はそれほど意識していないかもしれないが、サウジアラビア戦後に残した言葉の数々は、来年夏に待つ戦いへ向けたメッセージそのものだった。
(文責・藤江直人/スポーツライター)