
判定に物議?!五輪銅メダリスト清水聡と“元2冠王”阿部麗也のサバイバルマッチはどちらも「勝った」と不満を漏らす異例のドロー決着…清水は引退回避し阿部は日本王座に照準
プロボクシングのロンドン五輪銅メダリストで元OPBF東洋太平洋&WBOアジアパシフィックフェザー級王者の清水聡(39、大橋)と元日本&WBOアジア同級王者の阿部麗也(32、KG大和)のフェザー級10回戦が25日、後楽園で行われ、両者譲らず、ジャッジの一人が清水を支持、2人がドローで1-0のドロー判定となった。清水も阿部も互いに「勝った」と手応えがあったため意外なドロー判定に不満を漏らした。1年8か月ぶりの再起戦となった清水は引退危機を回避したが再戦には消極的。一方の阿部も松本圭佑(25、大橋)の減量失敗による棄権で空位となった日本フェザー級王座決定戦出場に照準を絞っている。

1人が97-93で清水、2人が95-95でドロー
割れんばかりの「聡コール」と「麗也コール」が1510人で埋まった後楽園ホールにこだました。
39歳の清水と、この日が誕生日で32歳となった阿部の世界戦経験のある2人の生き残りをかけたサバイバルマッチは最終ラウンドに突入した。
「一発もクリーンヒットをもらっていないが、ガードの上から打たれた手数で8ラウンドまでのポイントは互角かも」(KG大和ジムの片渕剛太会長)と考えていた阿部陣営は、9ラウンドに続けてGOサイン。徹底して前へ出で左右のフックを振り回した。右フック、左ストレートが清水の顔面をとらえた。
一方の清水陣営はポイントでリードしていると読んでいた。
「8、9ラウンドと会場が盛り上がってうれしくなった。体力にまだ余裕があった」
清水は右のリードと足を使って阿部の突進を懸命にさばく。互いに決定打がないままゴングが鳴った。
どちらも勝ったと思っていた。
清水は「勝ったと思った」の手応えを持ち阿部も「9,10(ラウンド)を取って、抜け出したかな。勝ったかなとの印象だった」と勝利を確信していた。
ジャッジペーパーが読み上げられた。
1人目が97-93の大差で清水。そして残り2人が同スコアの95-95。1-0判定でドロー。ファンを熱狂させた世界への再チャレンジをかけたフェザー級戦に決着はつかなかった。
2人は互いに悔しさを隠さなかった。
「一個目(97-93判定)が出たとき、会場が盛り上がって、これいったかな、8、9割取ったと思った。でもあと2つが同じと言い出したので、あれおかしいな?と。(パンチを)もらってグラっとはなったがダメージはそこまでなかった。最後に余裕ださずいっておけばよかったが、あとの祭りですからね」
清水がそう言えば、阿部も憮然とした表情だった。
「納得のいく結果じゃない。あのジャッジにはモヤッとした。ダメージはない。かといってこちらがダメージを与えていたかもわかんないが…。結果を聞いて“おおおお?”という感じ。出たジャッジがすべてといえばすべて」
清水の善戦をどれだけの人が予想できたのか。
2023年7月に井上尚弥がスティーブン・フルトン(米国)の持つスーパーバンタム級のWBC&WBOのベルトに挑んだビッグマッチのセミファイナルでWBO世界フェザー級王者のロベイシ・ラミレス(キューバ)に挑戦したが、見せ場のないまま5回TKOで敗れ、今回は1年8か月ぶりの再起戦だった。
一方の阿部も2024年3月に米国ニューヨークでIBF世界同級王者のルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)に8回TKOで敗れたが、昨年10月に再起戦をクリアしており、「清水さんに引導を渡す」のコメントがリアルに受け止められていた。