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清水と阿部の生き残りをかけた戦いはドロー(写真・山口裕朗)
清水と阿部の生き残りをかけた戦いはドロー(写真・山口裕朗)

判定に物議?!五輪銅メダリスト清水聡と“元2冠王”阿部麗也のサバイバルマッチはどちらも「勝った」と不満を漏らす異例のドロー決着…清水は引退回避し阿部は日本王座に照準

「スパーから動きはよくなかった」と、清水が振り返るようにスタートこそ、パンチへの反応が悪く、阿部が有利に運ぶものとみられたが、右のフックカウンターを狙い、ステップワークで阿部のインファイトをさばき、これでもかと放った右と「ダイヤモンドレフト」と評されたワンツー、左のボディショットでポイントを重ねた。
「よくない中で自分なりにやりきって。試合も噛み合った感じ。向こうはやりづらい。こっちの手の内でできた試合」
 阿部には誤算があった。
「序盤にパンチを受けたとき、正直、“こんなもんか”と怖さを感じなかった。これだとガード越しにもらっても対応できると思い、出入りより、ガードで距離を潰しにいった。でもガードに頼って大きいのを狙って中盤に手数が減った。ガード越しに打たせたことで見栄えが悪かった」
 阿部は、本来の出入りのボクシングではなく、ガードを固め、潜るように体を沈めて懐に入って左右のフックを振り回したが、そのインファイトに固執し過ぎた。一発を狙うあまり手数が減りガードの上から浴びた清水の手数とリングジェネラルシップがジャッジに影響を与えた。
 97-93と清水を支持したジャッジは、3回から8回までのすべてを清水のラウンドとしていた。ドロー判定の2人は、割れるラウンドもあったが、6、7、8ラウンドは清水を支持していた。
 阿部は、途中、小刻みに上体を揺らし、フェイントを入れ、リズムを変え、ペースを取り戻そうとした。5ラウンドにはロープを背負わせてラッシュをかけて見せ場も作るが、清水もガードを緩めず、随所のクリンチワークでその阿部の攻撃の時間をシャットアウトした。
「効いたパンチもなかった。入り際にコツコツ打ってくる右フックが嫌だなというくらい。もともと、やや近い距離で打たせると調子に乗ってくる。クリーンヒットにはなってないが、そうなっちゃう。調子づいてきた。ガードでいけるという手ごてをつかんだのがよくなかった」とは阿部の回想。
 清水にも誤算があった。
 大橋秀行会長が「まともにもらったパンチはないが、9、10と見栄えが悪かった。守りに入ってしまった」と指摘した9、10ラウンドだ。
「9、10とペースをあげて回転、スピード勝負」を仕掛けてきた阿部に対して防戦一方になった。
 清水もそこが反省点。
「競った試合の経験がないのでその差が出た。9、10と守りに入ったのがミス」
 もしジャッジの3人が揃って阿部を支持した9、10ラウンドのどちらかを清水が取っていれば、ドロー結果は覆っていた。一方の阿部も9、10ラウンドのボクシングをあと1ラウンド早く仕掛けていれば勝利をつかんでいた。その紙一重の駆け引きがボクシング。阿部の「ボクシングは奥が深い」のコメントがすべてだろう。

 

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