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清水と阿部の生き残りをかけた戦いはドロー(写真・山口裕朗)
清水と阿部の生き残りをかけた戦いはドロー(写真・山口裕朗)

判定に物議?!五輪銅メダリスト清水聡と“元2冠王”阿部麗也のサバイバルマッチはどちらも「勝った」と不満を漏らす異例のドロー決着…清水は引退回避し阿部は日本王座に照準

 大橋会長は「久しぶりに強い清水が見られた」と清水の健闘を称えた。
 2年前のラミレス戦前は、スパーリングから最悪の状況で「ずっと悪かった。スランプだった。試合にはならないと思った」と明かし「フルトンが(井上との)試合をやらないとか言い出して、清水の試合(ラミレス戦)が見れていなかったのでそれが心残りだった」と付け加えた。
 昨年5月の東京ドーム。あの井上がルイス・ネリ(メキシコ)を破った歴史的な試合会場に大橋ジムの赤いジャージを着た清水をみつけた。すでに練習を再開している話を聞いていた。
「またやるのか?」
 そう問いかけると清水は、「悔いが残っています。あの試合、いろんな意味でバランスが悪かったんです。ずっと…。それを取り戻したくて」と複雑な表情を浮かべていた。
 今回は原点に立ち返り古巣の自衛隊でアマチュアの選手とも拳をまじえた。「アマチュア選手のスピードで動体視力、目慣らしをしたかった」。1年8か月は、ボクサーとして老いていくのではなく清水にとって失った時間を巻き戻す時間だった。
「阿部選手も世界をやっていた選手。自分の中では頑張れたと自分に合格点をあげたい」
 清水は「負ければ引退」の危機を回避した。
 だが、今後の進退については「ゆっくり休んでから決めたい」と言及しなかった。大橋会長は「本人の気持ちが第一。続けるなら続ける、辞めるなら辞める」と清水の決断を最優先とする考え。このままでは終われないだろう。
 ただファンが決着に期待するリマッチについては両陣営とも消極的だった。
 清水は「再戦?考えさせて下さい」と乗り気ではなく、阿部も否定的な考えを明かした。
「再戦したいかと言われれば、自分はもう20代ではないので、なかなかそうはならない。再戦をしたところでその試合が次につながるかどうか。じゃあ、もう一回やろうぜと、燃え上がっていない。お互いモヤモヤ。あっちはあっちでモヤっとしたでしょ」
 KG大和ジムの片渕会長によると、現在ランキング2位につけている日本フェザー級王座に照準を絞っているという。
 王者の松本圭佑が減量中の体調不良で病院に搬送され、この日予定されていた防衛戦を棄権し、同王座を返上したため、空位となった王座決定戦は、対戦予定だった同級1位の大久祐哉(金子)とランキングに変動がなければ2位の阿部との間で行われる予定。片渕会長は「世界ランキングを上げるためには地域タイトルが重要。そのためにわざわざ2月に日本ランキング復帰を申し入れた」という。
 2人はそれぞれのやり方でもう一度世界を目指すことになる。
 阿部は「清水さんに引導を渡せなかった。モヤモヤする誕生日になった」と苦笑いを浮かべ、清水は「今回は阿部と(の戦い)いうより自分との勝負だった」と、どこか爽やかな顔をしていた。
 ドロー判定に物議はあるだろう。だが、生き残りをかけた2人の傑出したフェザー級ボクサーのプライドと、戦術、戦略が決着をつけさせなかったのである。

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