
なぜパ・リーグと相撲界の異色コラボが企画されたのか…京セラドーム大阪ではオリックスの古田島と人気力士の宇良がタッグ
意外だったのは宇良。大阪府寝屋川市出身だが、阪神ファンでもオリックスファンでもなく、野球はルールも怪しいというほどで、「子どものころ、あまり野球をして遊んだことはなくて、みんながグローブをはめているのに僕だけ素手だった」と明かした。プロ野球は神宮球場で一度観戦しただけだが、オリックスの平野佳寿投手(41)は京都・鳥羽高の先輩、阪神の近本光司外野手(30)は関西学院大の後輩にあたり、つながりはある。平野とは場所前の稽古を見学するほど交流があり、宇良も平野の自主トレに参加したこともある。
「一緒に練習して長く現役を続けている理由が分かりました。力強い球を投げるには手だけでダメと思うので平野さんにアドバイスしてもらいたい」
一方の古田島は、社会人野球の日本通運時代に相撲部と合同練習をした経験がある。「四股の動き、足を高く上げて止めるところとか柔軟性とか、ピッチャーにいかせる。ロッククライミングとか水泳とか、やったことがないことを取り入れるのはいいことだと思う」
2人は意気投合しエールを交換した。宇良は古田島について「お互いがエリートの高校、大学に進んできたわけではなくて、ちょっとスタートが遅いところで親しみを感じた」と話し「調べたら年俸が3500万円。来年、再来年と5000万円、1億となるよう期待しています」とニヤリ。
2年目の今季も勝利方程式の一角を担う古田島も「僕の名前が耳に届くように頑張っていきたい。1億円?ごちそうさまです」と励みにした。
宇良が登板予定の6月3日は大相撲五月場所明けとなる。宇良が「15日間、ケガだけはしないように心がけ、お客さんに喜んでもらえるような相撲を取り、ファンを増やしたいたい」と話せば、古田島も「今回のコラボを通じて野球から相撲を、相撲から野球を知ってもらえたら。個人的には開幕戦のメジャーリーグのようにワクワクするプレーを見せていきたい」と意気込んだ。
昭和の時代に「巨人、大鵬、卵焼き」という流行語があった。高度成長期の1960年代に、子供や大衆に人気のあるものの代名詞として使われた。巨人で時代を築いた現ソフトバンク会長の王貞治氏が「われわれはチーム。だけど大鵬さんは1個人だから。すごいよね」と話したことがある。
時が流れ、現在は、プロスポーツのジャンルも多様化、グローバル化してきた。
令和版の流行語で言えば「ドジャース、大谷翔平、パンケーキ&ラーメン」だろうか。相撲と野球は、伝統のある日本を代表する競技だ。今回のコラボはもう一度黄金期を取り戻しその価値を見直してもらいたいとの願いも込めた試みだろう。果たしてその効果は?
(文責・山本智行/スポーツライター)