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横浜DeNAの三浦監督はリーグ優勝&日本一連覇を狙う(写真・黒田史夫)
横浜DeNAの三浦監督はリーグ優勝&日本一連覇を狙う(写真・黒田史夫)

「彼はふてくされてはいなかった」横浜DeNAの三浦監督“ウィック激怒事件”の真実から見えるリーグ優勝&連続日本一に照準を定めた“モチベーター監督”として信念

 いよいよ今日28日からプロ野球がセパ同時に開幕する。昨季“下剋上日本一”を果たした横浜DeNAは「横浜奪首」をスローガンを掲げ3位に終わったペナントレースの優勝からの連続日本一という“コンプリートV”を狙っている。就任5年目の三浦大輔監督(51)は稀代の“モチベーター指揮官”としてどうチームを導くのか。昨年8月27日の阪神戦で三浦監督が交代を拒否したローワン・ウィック(32)に激怒した事件の真相からその信念に迫った。

 2軍落ちは通知せず

 真夏のハマスタで三浦監督がブチ切れた。
 昨年8月27日の阪神戦だ。5-2で迎えた7回だった。この回からマウンドに上がったウィックは、コントロールを制御できず、代打の糸原健斗、近本光司に連続四球を与え、中野拓夢にもレフト前ポテンヒットを落とされた。ひとつもアウトを取れず満塁となり、たまらず三浦監督がベンチを出た。審判に交代を告げてボールを受け取り、そのままマウンドに向かうと、なんとウィックは、首を振って「NO!」と大声を発して降板を拒否したのだ。
 その態度を見た三浦監督は鬼の形相で「チェンジ(交代)!」と一喝。腰から尻の付近を左手で押して無理やりマウンドから追い払った。“番長”の剣幕に押されたウィックは降参。抵抗を止めてトボトボと歩いてベンチへと下がった。普段は温厚で紳士的な三浦監督がフィールド内で激怒したのは監督就任4年目で初めてだった。結局、1点差まで詰め寄られたが、リードは許さず、逆に追加点を奪い、この試合を10―4で勝利した。
 三浦監督は、今、あの場面を振り返って「あれは事件でもなんでもないですよ(笑)。周りが騒いでいるだけで…」と、苦笑いを浮かべた。オフにテレビ番組などで引っ張りだこだった指揮官が、必ずこのシーンが話題にされたという。
 筆者は、たまたま、あの試合を現場で取材していたが、驚いたのは、翌日にウイックをベンチ入りメンバーからは外していたが2軍に落とさなかったことだ。あの降板拒否は、明らかに指揮官への反逆。
――2軍に落とすのが組織の鉄則では?と質問すると、三浦監督はこう返した。
「ウィックの調子が悪かったり、救援の失敗が続けば、入れ替えはあるでしょう。でもあの時は、そうではなかった。試合後にウィックと話をしましたが『自分が出したランナーなので最後まで投げたかった。責任をもって投げきらないとブルペンに迷惑がかかる』と言っていました。フォアボール、フォアボールで、打ち取った打球がポテンヒットになった。流れが悪かったので、選手交代という選択をしたとウィックに説明をしましたチーム全体で、”勝ち切る覚悟”というテーマでチーム全体で戦っていたので、ウィックの気持ちもわかる」
――指揮官の指令への反逆ではないと?
「そんなたいしたことではないです。彼はふてくされてもいなかった。ベンチで次のピッチャーを見守っていた。あれで試合も見ずに帰ったりしていたら問題ですがね」
 三浦監督が見ていたのは、ウィックのその後の態度だったのだ。
 この時点で横浜DeNAはまだ4位だったが、3位の阪神に2.5差と迫った。結局2位の広島が9月にまさかの大失速をして、巨人が優勝、阪神が2位、横浜DeNAが3位でレギュラーシーズンが終了した。その3位チームがクライマックスシリーズから日本シリーズに進出して“下剋上日本一”をやってのけるわけだが、この試合が、そのCS圏内にチームを滑り込ませた原動力になったことは間違いない。
 ちょうど、この阪神戦前に、主将の牧が「勝ち切る覚悟」という終盤戦に向けてのテーマを発表していた。
 指揮官の怒りを目のあたりにした牧秀悟は、こう証言している。
「4年間で、いい悪いにしろ、グラウンド内で感情を出すのを初めて見た。それだけ監督自身には何か思いがあった。それを見た選手に伝わった。勝ちに対して貪欲というか、“自分たちもやらないと”という気持ちになった」
 指揮官の取った行動はチームに強烈な刺激を与えた。
 三浦監督は球界でトレンドとされるモチベーター監督なのだろう。

 

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