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阪神の藤阪神が連勝も藤川監督の異例の勝負采配が物議(写真・Imagn/ロイター/アフロ)
阪神の藤阪神が連勝も藤川監督の異例の勝負采配が物議(写真・Imagn/ロイター/アフロ)

開幕戦勝利の阪神・藤川球児監督が完封目前の村上頌樹をあと一人で交代させた「温情」&「非情」采配の理由とは…岡田彰布前監督とは違った独自色を示す

 プロ野球のセパ両リーグが28日に開幕、阪神は敵地のマツダスタジアムで広島を4-0で下して藤川球児新監督(44)が初陣を飾った。現役時代に火の玉ストレートで日米通算245セーブをマークした投手出身らしい采配が見えたのが村上頌樹(26)の起用法だ。完封ペースできた村上を9回もマウンドに向かわせたが二死一、三塁となると、あと一人で岩崎優(33)にスイッチして勝利を呼び込んだ。また3回一死三塁では、序盤にもかかわらず前進守備を敷いてピンチを脱する勝負勘も見せた。佐藤輝明(26)が先制2ランを放ち、8回に貴重な追加点を奪うなど、理想的な“王道野球”で阪神が白星スタートを切った。

 

 試合後のヒーローインタビューで村上が安藤投手チーフコーチから「最後まで」と声をかけられたことを明かした。
 8回を終えた時点で111球。開幕投手の普段とは違う緊張感からくる疲労に加え、しかも9回は矢野、小園と左打者が2人絡む。現在顧問の岡田前監督であれば、長いペナントレースの戦いを見据えてここでスイッチだっただろう。ピンチもなく終わっていたのかもしれない。だが、藤川監督は完封を狙わせた。
「最後まで投げ切ろうと思った」と村上も意気に感じていた。
 温情なのか。いや、それだけでなく投手出身の監督だからこそわかる“完封”をなしとげた際に得るものを計算したのかもしれない。
 だが、そう、うまく事は運ばない。一死から矢野に四球を与え、続く小園には、カウント1-2からチェンジアップで誘ったが、その微妙なハーフスイングがボールと判定された。村上は苦笑い、ベンチでは藤川監督も笑って「それはない」とでも言いたげにクビを横に振った。結果は小園にライト前ヒットでつながれ一死一、三塁となった。だが、藤川監督は動かない。
 村上は、新外国人の4番、モンテロを2球で追い込みながら、誘い球に手を止められ粘られた。それでも最後はインサイドを146キロのストレートで押し込みセカンドフライに封じ込んだ。球数は135球になっていた。左の好打者、秋山を迎えたところで藤川監督が動く。
 あと一人で“非情”の交代を命じたのである。
 スポーツ各紙が伝えた試合後のテレビインタビューによると、藤川監督は「最後は球数が少し多くなってしまって。なんとか、というところで、最後に素晴らしいアウトを取ってくれたので、岩崎につなげたというところでは、チームにとっても大きな1勝で結束力がまた高まったと思います」とコメントしている。
 135球は村上にとって自己最多。
 メジャーではわずか10球の違いが肉体へ影響を及ぼすとされる。おそらく藤川監督の中で、完封は狙わせたが、130球がリミットとしてあったのだろう。冷静で先を考えた継投。岩崎はアウトローに糸を引くようなストレートを投じて秋山を見逃しの三振に斬って今季初セーブをマークした。
 藤川監督が強調したように全員で勝ち切る一体感の出るような勝利だった。

 

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