
開幕戦勝利の阪神・藤川球児監督が完封目前の村上頌樹をあと一人で交代させた「温情」&「非情」采配の理由とは…岡田彰布前監督とは違った独自色を示す
9回二死まで4安打7奪三振1四球無失点の素晴らしい投球内容で、初の開幕投手の大役を見事に果たした村上は、「先輩方は開幕戦は緊張するが楽しんで投げたって言ってたので、自分も楽しんで投げれたらなと思いながら投げていた」と振り返り、「最後あと1つアウト取れなかったので悔いは残りますし、そこは来週しっかりと果たせるように頑張っていきたい」と、自らの宿題を口にした。
現役時代にタイトル獲得経験のある評論家の一人も「私も岡田前監督であれば9回から継投に入っていたと思う」という見方をしていた。
「優勝イヤーに、岡田監督は、巨人戦でパーフェクト投球の村上を7回で交代させたことがあった。あの時の村上とは、もちろん今の村上では経験値は違うが、これも藤川監督の色。球数であと一人で代えたところは決して温情だけではないことも示した。それぞれの監督の特徴が出ていいと思う。采配の評価はシーズンが終わったところで出るでしょう」
2023年4月12日の巨人戦で先発した村上は7回までパーフェクトに抑えていたが、84球で、当時の岡田監督は継投を決断した。開幕当初は中継ぎ予定だった村上の初先発。先を見て打たれて負け投手になり自信を失うことを危惧した。結果、村上は、10勝6敗で優勝に大貢献してシーズンのMVPである。岡田前監督の先を見据えた鋭い洞察力である。もちろん当時の村上と、2年間、ローテーを守り初の開幕投手に抜擢された今の村上とでは状況は違う。だが、藤川監督は、「温情」と「非情」をコントロールした継投策で、開幕勝利につなげた。
さらに藤川監督の“勝負勘”を示す采配もあった。
佐藤が初回にいきなり先制2ランを放ち、2-0でリードした3回に先頭の菊池にレフト線を破る二塁打を打たれ、8番に入れていた投手の森下にバントを決められ一死三塁となると、9番の會澤を迎えた場面で内野にバックホーム体制を敷かせたのである。ゲームの序盤からこの隊形を指示するのは異例の部類に入る。おそらく森下の立ち直りと、村上の出来をみて1点勝負だと判断しだのだろう。
結果、會澤はショート正面のゴロ。三塁走者の菊池はスタートを切れなかった。もし、中間守備であれば1点は奪われていただろう。阪神は8回に広島2番手の塹江から先頭の近本のラッキーな二塁打を皮切りに、大山、前川の連続タイムリーで貴重な2点を追加したが、もし3回に1点を失い、リードが2点ではなく、1点であれば、また別のプレッシャーが村上にのしかかり、制球や配球への影響を及ぼしたかもしれない。藤川監督がコーチ経験なく、いきなり監督に就任したことへの懸念が、この1試合だけで消えたわけでないが、確かな“勝負勘”を示したことになる。
今日29日の第2戦の先発は、広島が床田で、阪神がオープン戦で結果を残して藤川監督が先発に抜擢した3年目の左腕の富田。ここでニューヒーローが飛び出すことになれば阪神は勢いづくだろう。