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井上尚弥が中谷潤人に来春東京ドームでの対戦をサプライズ要求(写真・山口裕朗)
井上尚弥が中谷潤人に来春東京ドームでの対戦をサプライズ要求(写真・山口裕朗)

なぜ井上尚弥は中谷潤人に大橋会長も「聞いていなかった」サプライズで「来春東京ドーム」公開対戦要求をしたのか…リーダーの自覚とボクシング界を盛り上げるための壮大なドラマ作り

 プロアマ合同のボクシングの年間表彰式が31日、東京ドームホテルで行われ、7年連続8度目の最優秀選手賞に輝いたスーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(31、大橋)が、技能&KO賞のWBC世界バンタム級王者、中谷潤人(27、M.T)を名指してして来春東京ドームでの対決を呼びかけるサプライズがあった。大橋秀行会長(60)は水面下で進行している計画を明かすことを「聞いていなかった」そうだが、「この試合が実現しなければ ボクシング界の未来はない」と、ビッグマッチ実現を約束した。そしてモンスターの異例の行動を評価した。

 「この試合が実現しなければ日本ボクシング界の未来はない」

 

 その瞬間、プロアマの関係者が集結した東京ドームホテルの大宴会場がどよめきに包まれた。
 7年連続8度目の最優秀選手賞を受賞した井上はそのスピーチで、「今年でデビュー13年目になり、今年は5月、9月、12月と激戦が続いていきます。ここ最近、ファンの方々、関係者の方々から多くの声があがっている国内ビッグマッチへ向けてベストを尽くしていきたいと思っています」と語った次に「そこで中谷くん!」と後ろに座っている中谷を振り返り「1年後、東京ドームで、日本ボクシングを盛り上げよう」と、対戦を呼びかけ、マイクを手渡したのだ。
 中谷も笑顔で「ぜひやりましょう」と応じて立ち上がり、2人はガッチリと握手した。モンスターが公の場で中谷の名前を出したのは初めて。しかも、時期と場所まで特定してモンスターの方から対戦をサプライズオファーしたのである。
 その意図を井上が明かす。
「こうやって顔をあわせる機会はあまりない。日本のファンのみならず、海外のファン、関係者も期待している試合でもある。こういったこともいいのかなと」
 事前に壇上で何やら中谷と打ち合わせをしていたかのようにも見えたが、「この前は強かったね、というような話をしていた。打ちあわせはしていません(笑)。そんな冷めるようなこと聞かないでね」と笑って種明かしはしなかった。
「お互いが無事に終えることができれば実現するカード。自分自身に気が抜けなくなる。この1年間という時期にドラマをつくれれば、1年後、注目を浴びて試合ができる。“次決まりました”という試合ではなく、こんなに期待している人がいるんだから、しっかりとストーリーを作りあげて東京ドームで戦いたい。プロとして必要なことかなと」
 世界が注目しているビッグマッチの壮大なドラマの幕開けのゴングを自ら打ち鳴らしたのである。
 最も驚いたのは大橋会長だった。その瞬間、「え?」という顔をしていた。
「知らなかった。宣言しちゃったったねえ」
 壇上で中谷と隣の席に座っていた2人がヒソヒソ話をしているのを見て「アレ?」と思ってみていたが、まさか独断で、井上が「(両陣営の)会長同士で話している」と明かした水面下で進んでいる計画を“発表”するとは予想していなかった。
 井上がテーブルに戻ると笑って「聞いてないよお」と話しかけたという。
「事前に私に確認をしたらストップがかかると思ったんだろうね。でも悪いことじゃない。会場は盛り上がったし、支障はない。お互いに認めあい、尊敬しあっている。そういう戦いは喜ばしいこと。ボクシングはスポ―ツで格闘技じゃない。スポーツのボクシングという感じがした」
 米老舗誌「ザ・リング」が定めるパウンド・フォー・パウンドランキング2位の井上が、同8位の中谷に、憎悪や因縁なく、純粋に最強挑戦者と認めて対戦を逆オファーする。大橋会長は井上の行動に何か爽やかなものを感じた。

 

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