
「那須川天心より生意気で」「辰吉丈一郎のような勢い」名門帝拳の“23歳スター候補”高見亨介が6回TKOで日本ライトフライ級王座を獲得…「すぐに世界を獲れる」と本田会長
プロボクシングの日本ライトフライ級タイトルマッチが8日、後楽園ホールで行われ、挑戦者の高見亨介(23、帝拳)が6ラウンド2分26秒に王者の川満俊輝(29、三迫)をTKOで下して9戦無敗でタイトルを手に入れた。スター性を感じさせる超ホープ。試合後、リング上から大胆にも本田明彦会長に世界挑戦を直訴し、本田会長も「すぐに世界は獲れる」と世界戦を実現させる考えを明かした。
王者のガッツを断ち切る
6ラウンドの終了間際だった
「打ち込め、倒せる!」
青コーナーから田中繊大トレーナーの声が飛ぶ。
5ラウンドに続いて突っ込んでくる川満の顔面に右のストレートをクリーンヒットすると動きが一瞬止まった。チャンスを見逃さない。センスなのだろう。猛ラッシュ。左フックで王者の顔が揺れて、左ストレートがヒットしたところでレフェリーが試合をストップした。1450人と発表された後楽園ホールは、興奮というよりも騒然。何か凄いものを見た後のリアクションに近い。
「これがチャンピオンになる選手なんだと噛みしめながら試合をしていた。でも気持ちを折らない、気持ちでも勝とうと思った。最後に仕留めきれたのは素直に嬉しい」
高見はプロ9戦目で手にした初のベルトを右肩にかけた。
ガードを固め、頭を振りながらプレスをかけて接近戦を仕掛けてくる川満にスピードで対応していた高見は、1ラウンドを終えると自ら戦術を変えた。
「接近戦でつきあおうと思ったが、そこの部分は相手がひとつ上手だと思ったので足を使ったほうがいいと、やっている中で切り替えた」
そのボクシングIQが凄い。
スピードに乗った左ジャブを打ちながらステップワークを駆使して王者の突進をさばく。機を見てカウンターの左右のボディ、左フック、右のストレートを叩き込んでいく。
川満にとってそれは誤算だった。
「もっと打ち合って勝負してくるかなと思っていたが甘かった。ダメだな、ダメだなが続いた。中へ入って削りたかったが、させてくれなかった。そこが自分の弱さ」
なんとか打撃戦に持ち込もうと、「来い!」とジェスチャーで挑発したが、高見はのってこなかった。高見は、「最後の10秒で展開を作った」で、毎ラウンドの最後に目にも止まらぬ凄い連打を見せて確実にポイントを奪い、ダメージを与えていく。
三迫陣営からは「くっつけ!」の声が飛ぶが、3ラウンドには、左右のボディから上下のラッシュ。高見はコーナーに帰るとニヤっと笑った。
「ボディと、左フックに何回も手応えがあった。テンプルに当たっていた」
4ラウンドには、一方的に打ちまくった。レフェリーは止めるタイミングをみはからっていた。だが、川満は前進を止めなかった。ゴングが鳴ると、高見は何か不思議なものでも見るような表情を浮かべた。
「もらってもガツガツくる選手とやったことがない。やり辛さがあった。効いただろう、と思ったが、そこからの粘りが凄かった。そこには驚かされた」
それが初のタイトル戦で学んだものだった。
「凄くいい糧になった。さらに気持ちの面でレベルアップできた」
だが、高見は、それ以上の闘争心を見せた。王者のガッツを断ち切ったのだ。