
「那須川天心より生意気で」「辰吉丈一郎のような勢い」名門帝拳の“23歳スター候補”高見亨介が6回TKOで日本ライトフライ級王座を獲得…「すぐに世界を獲れる」と本田会長
川満は悔しさを隠さなかった。
「効いたパンチはなかった。もうちょっとやりたかった。ふがいない」
両目は腫れていた。キャンバスに倒れなかったが、蓄積したダメージを考慮すると、田中レフェリーの判断は間違いではなかっただろう。
三迫ジムの横井龍一トレーナーは「こちらはスタミナがあるんで、5、6ラウンド以降の勝負だと考えていたが、削らせてくれなかった。今までの相手なら詰めにいいってパンチを当てると引いてくれるが、高見選手は引かない。あれが強さ。連打をまとめてくるのも想定内で、ああやってくる時に打ちあわずに外していく計画だったが、それができなかった」と、立てた作戦を空回りさせた高見に脱帽した。
絶対に負けられない理由があった。
高見はトランクスに「叶夢」という名前を縫い込んでいた。昨年3月、試合前日に、この世を去った“親友”の元日本ライトフライ級ユース王者、坂間叶夢氏の名前だ。
「いろんな大切な人との別れが多かった。(長野)マネージャーもそう。いい報告ができた」
何かと世話を焼いてくれた長野ハル氏も今年1月に天国へ旅立っていた。
試合後、高見はリング上から「大口をたたかせて下さい。会長、世界挑戦させて下さい」と世界戦を要求した。
帝拳ジム所属で、こんな大胆な行動に出たボクサーは見たことがない。
「倒し切れたら、少し偉そうなことを言っても許されるかもと。ここから怒られるかもしれないが、自分の気持ちを少し出させてもらった。確信につながった。(世界を)やりたいなという気持ちがさらに高まった」とアピールの理由を明かす。
高見は、目黒日大高時代にインターハイ、国体で優勝、2019年のアジアユースでも3位となり、パリ五輪を狙っていた、アマ戦績43勝4敗のアマエリート。2022年7月にプロデビューして、ここまで9戦9勝7KOで、現在は、IBF4位、WBA5位、WBO9位、WBC11位にランキングされている。
そのとき本田会長は控室に戻っていた。
「あんなにガッツのある相手にここまでさばける選手は世界でもいないよ」
そう評価した本田会長に、リング上の高見発言を伝えると、「ライトフライならすぐにでも獲れる。日本王座を防衛してもしょうがないからね」と、すぐにでも世界戦を実現することを示唆した。
「久しぶりに若くて素質のあるチャンピオンが出てきた。一番、生意気なんだけどね。天心より?そうだよ(笑)。頭がいいしスター性がある」
WBOアジアパシフィックバンタム級王者で、世界を狙っている那須川天心よりも「生意気」というのだから、相当、信念があり、気持ちが強いのだろう。
元WBC世界スーパーライト級王者の浜田剛史代表も「何も言うことはなかった。ハツラツとやっている。いつでも(世界挑戦が)できる状態にはある」とその実力に太鼓判を押した。