
記者が聞いた「今井上尚弥と戦って勝算はあるのか?」の愚問に中谷潤人が「見えていない」と答えた理由とは?…ドネア、ネリ、タパレスとの“モンスター前哨戦”にも興味示さず
中谷は壮大な夢を抱きつつ足元を見失うことはない。
圧勝したクエジャル戦の反省さえ「あります、あります」と声を大にした。
「自分の弱みなんで、あまり言いたくはないが、感じる部分はある。より細かくなるが、ガードの位置とか、バランスとか、より繊細にやっていかないとな、という感覚があります。目の前の試合のことを丁寧にやっていければ、おのずと成長できる。大きい試合に向けてより正確になってくれれば」
フォーカスしているのは6月上旬に予定されている次戦だ。
有力な対戦候補の一人が、2月24日の防衛戦後のリング上で互いにエールを交換したIBF世界同級王者の西田凌佑(六島)。西田はIBFから指名試合を指令されているが、その問題さえクリアできれば、念願の統一戦が実現することになる。
「同じサウスポーで作戦というか、実行能力が高い選手。自分からバランスを崩さない選手という印象がある。向き合ってみないとわからないが、そこを想定して練習していきたい」
西田はスピードと出入りに定評のあるアウトボクサーだが、タイトルを取ったエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)との試合でインファイトもできる幅の広さを見せ、昨年12月の初防衛戦では、アヌチャイ・CPフレッシュマート(タイ)に7回KO勝ちを収めて、さらに攻撃的な一面も披露した。パンチはないが、成長曲線は凄い。中谷もそこを評価しているのだろう。
「自分は崩さず、相手が崩れていくのをコントロールしていく選手。そこら(バランスの崩し合い)の駆け引きも面白いかなと」
そう試合展開を予想してみせた。
オフには日本テレビ系のバラエティ番組「踊る!さんま御殿!!」に出演するなど、リング外での活動範囲を広げている。司会の明石家さんま氏には、「噂の中谷やな」と声をかけられたという。
「試合を見られていない層に僕を知ってもらって見てもらう機会がバラエティに出させてもらうことで増えた。より注目が高くなる。それをパワーに変えてより引き込めるようにしたい」
パウンド・フォー・パウンドの8位が示すようにボクシング界では海外も含めてトップボクサーとしての立場を築きあげて完全にブレイクしているが、まだ世間での認知度はそれほど高くない。そのギャップを埋めるための活動も怠らない。だが、井上尚弥でさえ今のスーパースターの地位を確保するには時間がかかった。インパクトのあるKO劇を続けていけば、心配しなくとも、いずれ人気はついてくる。ビッグバンの呼び名が、全世界に浸透する日はそう遠くない。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)