
阪神が77年ぶりの対巨人開幕5連勝を果たした3つの理由…「大山悠輔の“魚雷バット”」「小幡竜平の超美技」「防御率0.00及川雅貴の存在」
実は、大山は、前日のゲームから秘密兵器を使用していた。
メジャーリーグを席巻した“魚雷バット”である。NPBでも今月11日から使用許可が下りており、大山が契約を結ぶミズノもさっそく“魚雷バット”を作成して、大山は早い段階で試し打ちをしていた。
”魚雷バット”は、先端が細く最も太い部分が、まるで魚雷のように従来のバットよりも真ん中にあり、インパクトの瞬間にパワーが発揮しやすくなっている。ただメジャーでも、選手によって「合う合わない」の賛否があり、大谷翔平やアーロン・ジャッジは使用していない。“魚雷バット”が有効だとされているのは、ポイントが近く、インサイドのボールにつまる傾向のある打者。本来のバットであれば、芯を外して詰まるコースが、芯の幅が広くグリップに近くなっている”魚雷”バットなら芯でとらえることができる。逆にアウトコースのボールに対しては、本塁打率が下がるなどのデータがメジャーでは、出始めているそうだが、大山は、まさにその”魚雷バット”の特性を生かして、田中のインコースのシュートを詰まることなく、三塁線を破るヒットにしたのである。
現役時代にタイトル獲得経験のある評論家の一人も、「大山はバットが遠回りする傾向があって調子を落としていたが、そういう打者には魚雷バットはまさにうってつけ。今後は、外角を攻められるなど相手も対策を練ってくるだろうが、大山にはプラスに働く可能性がある」と見ている。
大山は、22、23日の横浜DeNA戦、25、26日の巨人戦と今週4度も決勝打を記録した。巨人からすれば、前日の3ラン、初回のタイムリーと調子づいている佐藤を警戒したのかもしれないが、大山との勝負は正解とは言えなかった。
阪神は、6番の前川も再び申告敬遠で歩かされたが、続く坂本がレフトオーバーの2点タイムリー二塁打。さらに小幡も犠牲フライを決めて一気に4点をスコアボードに刻み勝負を決めた。
阪神と巨人の差はどこにあるのか。
前出の評論家は「ブルペンと守備力の違い」と指摘した。
「巨人は大勢、マルティネスという8、9回の鉄壁の布陣を生かしきれていない。どうしても点が取れないので、先発に代打を送る展開となり、6、7回という空白が生じている。そこを守り切る3人目、4人目がまだ不安定で、ブルペンの総合的な質と数でいえば、阪神が上だ。そして小幡のビッグプレーに象徴されるような素晴らしい守備を連発させた阪神とは、対照的に巨人の内野陣には綻びがあった」
救援防御率は、阪神が脅威の1.85で巨人が2.89。このデータがすべてだろう。及川、島本、漆原、岩貞の4人が、防御率0.00で、石井が同0.75、桐敷が同1.00。この日、阪神はストッパーの岩崎をベンチに入れなかったが、代役の石井が9回を3人でピシャリと抑えた。
藤川監督の継投策も光った。6回からディプランティエに代えて投入した岡留が二死からキャベッジに四球を与えると、佐々木を迎えた場面で島本に小刻みリレー。島本が三振を奪うと、7回も回跨ぎさせて3人でピシャリと抑えている。
イニング途中の交代や回跨ぎは、本来はタブー視されている起用法だが、藤川監督にその固定観念はない。日米通算245セーブの“火の玉ストッパー”だからこそわかる救援投手の心理があるのだろうか。