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矢吹正道サイドが冨樫アナのリング上のアナウンスで名誉を傷つけられたとJBCと本人に謝罪を要求(写真・アフロ/山口裕朗)
矢吹正道サイドが冨樫アナのリング上のアナウンスで名誉を傷つけられたとJBCと本人に謝罪を要求(写真・アフロ/山口裕朗)

「失礼すぎる。2階級同時制覇にケチをつけた。言われる筋合いはない」なぜIBF王者の矢吹正道サイドはJBCリングアナに激怒の謝罪要求をしたのか…そしてJBCが早急に対応しなかった理由は?

 プロボクシングで日本人で初めて2階級を同時に制覇する偉業を成し遂げた矢吹正道(32)が所属する名古屋のLUSH緑ジムが28日、3月13日に両国国技館で行われたWBC世界フライ級王者、寺地拳四朗(33、BMB)とWBA世界同級王者、ユーリ阿久井政悟(29、倉敷守安)の統一戦でのJBCの冨樫光明リングアナウンサーのアナウンスによって著しく名誉を毀損されたとして、謝罪や処分などを求める要請文をJBCの評議員会議長を務める株式会社東京ドームの北原義一代表取締役会長CEOに26日付で送付したことを発表した。JBCは、要請書を受領したことを確認すると共に今後真摯に対応する姿勢を明かした。

 「議論の余地が残る1敗のみ」

 矢吹陣営を激怒させたのは、JBCの職員でもある冨樫リングアナのWBC&WBA世界フライ級統一戦で寺地を紹介したリング上でのワンフレーズだった。
「25戦24勝。敗戦は議論の余地が残る世界タイトルマッチで喫した1敗のみ」とアナウンスしたのだ。
 寺地の1敗とは2021年9月に京都で矢吹に10回TKO負けしてWBC世界ライトフライ級王座を失った1戦。この試合で寺地は9回に右目上をカットしたが、レフェリーはパンチによるものと判断した。試合後、寺地陣営は、映像をチェックした上で「パンチによるものではなく故意のバッティングではなかったか。判定を覆すことや無効試合を求めるわけでないが、故意バッティングであれば減点となる。見解を聞かせてもらいたい」との質問状をJBCに送付した。その後、JBCは「レフェリーら現場における判断としては不合理とまでは認められなかった」と、故意バッティングではなかったとの結論を出し、判定を覆さなかった。
 つまり「議論はあったが議論の余地は残っていない」のだ。
 JBCがその判断を下したにもかかわらず、JBCの職員がいまだに疑義が残っているようなアナウンスをボクシング界注目の統一戦のリング上でしたことに矢吹陣営は怒りの声をあげた。
 同ジムの松尾敏郎会長によると、矢吹を応援している周辺の関係者から「抗議して欲しい」との連絡が入り、松尾会長もジムをあげて正式に抗議する方針を固めて3月17日にJBCの安河内剛本部事務局長へ抗議文を提出した。
「2階級同時制覇のチャンピオンを傷つけるような言い方。あまりにも失礼だしケチをつけているのと同じですよ。そんなことをJBCの役員でもある富樫氏に言われる筋合いはない。ジムの会長として矢吹の名誉を守らなければならない」
 矢吹は、昨年10月にIBF世界ライトフライ級王者に返り咲き、3月29日にその王座を保持したまま1階級上のIBF世界フライ級王者のアンヘル・アヤラ(メキシコ)に挑戦して12回TKO勝ちを収めて、日本人初の2階級同時制覇の偉業を成し遂げていた。
 JBCも緑ジム側からの抗議を受けて富樫アナウンサーをヒアリングするなどした上で、松尾会長と協議を重ねた。
 松尾会長は「冨樫氏本人に反省の色がないと聞いた。直接、冨樫氏と話したいと訴えたが、それはJBCに拒否された」という。JBCがここまで謝罪していない理由は、冨樫氏本人が間違った発言をしていないと主張しているためとみられる。
 3月29日に愛知県で開催された矢吹の世界戦の際にJBC幹部は、矢吹本人も交えて話し合いを行う予定だったが、矢吹陣営の「世界戦が終わってからにして欲しい」との要望を受けて協議は行われなかった。松尾会長によるとその後JBCからの連絡が途絶え、矢吹本人から「あの問題はどうなっているんですか?」との訴えがあったため、「なんの返答もない。1か月以上も名誉を傷つけられた状態が放置されたままで、もうらちがあかないので、再度JBCの上部に文書を出させてもらった」という。
 JBC側も矢吹が世界戦で怪我を負ったこともあり、矢吹サイドからの連絡を待っていたという行き違いがあったというが、ことの順番から言えば、JBC側から早急に連絡をとるべき問題だっただろう。

 

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