
「失礼すぎる。2階級同時制覇にケチをつけた。言われる筋合いはない」なぜIBF王者の矢吹正道サイドはJBCリングアナに激怒の謝罪要求をしたのか…そしてJBCが早急に対応しなかった理由は?
要請文では以下の5つの条件をつきつけた。
①JBCから矢吹への謝罪 ②冨樫氏のJBC事務局員としての処分 ③冨樫氏の試合役員としてのライセンス上の制裁 ④1~3についてJBC公式HP上での広報 ⓹冨樫氏から矢吹へ対面での謝罪
これらの実行期限は5月2日。要請文には「期限までに真摯かつ正当に履行されない場合には、法的手段もやむを得ないことを念のため付言いたします」とあった。
松尾会長の怒りは収まらない。
「言わんでいいことを言った。なんで素直に謝れないのか。こっちも意地になる。当事者としてひくにひけない。冨樫氏が反省しているのかしていないのか。書面でもらわないと納得はできない」
冨樫氏は、1999年からリングアナをスタートさせた大ベテラン。選手紹介の際に独自で考えたフレーズをつけ加えるなどの工夫をして新境地を切り拓いた名物アナだ。一方で過去に冨樫氏は、2013年9月に香川で行われた亀田大毅のIBF世界スーパーフライ級王座決定戦の際に、亀田興毅、和毅氏らに監禁、恫喝されたと訴訟したが、逆に亀田サイドに名誉棄損で反訴されて敗訴、320万円の賠償命令を受けている。
JBCではリングアナがルール説明やジャッジを読み上げたりするため、世界的には珍しくリングアナへのライセンス制度を導入している。ライセンスのない人間はリングアナを務めることができない。そのためリングアナのアナウンスはJBCの公式発言として認知されている。今回の問題は、松尾会長が訴えるように冨樫氏一個人の主観で言ったでは済まされない。
JBCが「故意バッティングはなかった」と裁定を下した問題をJBCのリングアナのライセンスを持った人間が、自らの主観で「議論の余地が残る」と発言したのは、あまりに配慮に欠けた発言だった。
JBC側は「要請文は受領しました。精査して真摯に対応したい。ただ時間的に5月2日には間に合わない。松尾会長とその点も含めて協議させていただきたい」という。要請文には、法廷闘争をも辞さぬとの一文があるが、そこまでもつれこむことはないだろう。ただ⓹の富樫氏の対面での謝罪などJBCが5つの要請をすべてのむことは難しい。両者の落としどころとしては、冨樫氏への処分の重い軽いではなく、矢吹への謝罪も含めてJBCが2階級制覇王者の名誉の回復をどんな形で行うかだろう。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)